3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

ビンテージのレーシングカー用にカスタマイズされた自動車部品をArtec Space Spiderを用いて作成する

コンピューターゲームと車づくりに情熱を抱いていたクリス・アシュトン(Chris Ashton)氏は、彼の職業と情熱をきっかけとして3Dスキャンの世界に足を踏み入れるまで、それほど時間はかかりませんでした。「私は一日のほとんどを3Dプログラムに費やしています。そのおかげで、この素晴らしいスキャナとソフトウェアについて理解を深めるのに役に立ったと思います」と彼は言います。

道路を走る準備ができているレーシングカー

アシュトン氏は、カリフォルニアを拠点とするRuffian Carsという、「 一般の道路も走れる」レーシングカーを設計、組み立て、改造、そして製造する会社に勤務しています。そんな彼が現地の販売代理店であり、Artecの認定パートナーでもあるSource Graphicsを訪れたとき、彼はArtec製品の紹介や説明を丁寧に受けましたが、それにはたったの30分しかかかりませんでした。「私が彼らのオフィスを訪れ、スキャナについていろいろ質問したんです」と彼はその時の状況を説明します。「彼らは私に真摯な対応をしてくれ、しかも私は彼らに実演までしていただきました」

この経験により、アシュトン氏はArtecのハードウェアとソフトウェアについての知識を十分に深めることができたので、彼は購入を即決意し、自分の自動車整備の趣味にこの新しい技術を利用しようと計画していました。その日、彼は2台の3Dスキャナを持ち帰りました。それは、 Artec Space SpiderArtec Evaでした。アシュトン氏が購入した後、Source Graphicsチームはすべてが彼にとって上手くいっているか、きちんと確認するために、彼に確認の連絡を入れました。

Artec Space Spider(左)とArtec Eva(右)

Artec Space Spiderはその名前が示すように、もともとは国際宇宙ステーションで使用されるために設計された製品なので、小型部品の非常に詳かいディテールをキャプチャするのに最適です。メトロロジー・グレード(寸法検査レベル)の精度を保証する、この産業用スキャナは細い線や鋭いエッジ、または複雑なジオメトリのスキャンに優れており、コインや鍵、医療機器に自動車部品など、あらゆるものに最適です。

Artec 3Dの最上級スキャナであるEvaは、軽量で高速、多用途で、 中型オブジェクトの高精度スキャンを提供します。スタンドアロンスキャナとして完璧なEvaですが、小型部品や複雑なディテールを広くカバーする、大規模なスキャンをするために他のArtecスキャナと組み合わすこともできます。

「最初の1、2時間は、スキャナの移動速度やターゲットへの距離はどれくらいがいいのかいろいろ試してみたり、ソフトウェアの使用方法を思い出そうとして苦労しましたが、その日の夕方のうちに、薬瓶とニンニクを使用して初めてのスキャンを数回ほど上手く作成することができました」とアシュトン氏は言います。「そのおかげで、その日の夜は私は自分がした投資に満足して寝床に着くことができました」

しかし、それはほんの始まりに過ぎませんでした。

カスタマイズされたヘッドライトがもうすぐ装備されるGT40。

アシュトン氏はArtec Evaを使用して、彼が取り扱っている車全体の3Dスキャンをキャプチャしました。また、Space Spiderの使用で、これから統合させたい別のコンポーネントにズームインすることができました。

ヘッドライトの裏側のさまざまなジオメトリは、Space Spiderスキャンによって忠実に再構築されました。

彼が思い描いていたさらに大きな計画とは、クラシックカーを完全にカスタマイズさせて、一般道路を走れるようにするだけでなく、人々が注目して思わず振り返るほど、見栄えもよくすることでした。「このフェンダーフレア(泥除けなどの役割を持つサイドパネルの部品)は、私を一番最初にこのスキャナ達へ導いてくれたものです」とアシュトン氏は言います。「私がその車のボディのスキャンを終えた後、車の部品は形状に応じて3DモデリングプログラムのBlenderか、SketchUpにインポートされました。その後、フレアはボディ上に別々のピースとして作成され、3D印刷がされました」

彼が行う作業の流れはこうです。「まず、その車の元のフェンダーをスキャンして、それを私のコンピューターに送ります。そして、デジタルのフェンダーフレアをその上でモデル化させます」と彼は説明します。「次に、VRヘッドセットを着用してその車の中を歩き回り、仮想3Dで部品を確認し、見た目を良くする調整を行います。そのデジタルファイルに満足ができたら、大判3Dプリンターでフェンダーフレアを3D印刷します」

3D印刷されたフェンダーフレアは車にきちんとフィットするか確認された後、別の整備工場に送られ、炭素繊維でその形のフェンダーフレアを大量生産するために鋳型が作成されます。この方法は、彼の以前の車がカスタマイズされた方法とはまったく対照的です。3D印刷は以前の方法で既に使用されていましたが、以前のプロセスには多くの時間とテスト、パターンの作成、そして試行錯誤が必要でした。「この方法での大きな利点は、追加させたいカスタムのフェンダーフレアが実際の車の寸法のスキャンに基づいてデジタル構築されるので、きちんと車にフィットすることです。もうひとつは、フレアは車の両側にひとつずつ装着される部品なのですが、デジタル構築のおかげで両側の部品を正確に左右対称にすることができることです」

フェンダーの3Dスキャンは、Blenderでカスタムのフレアを設計するための基盤として使用されました。

このプロセスでは、カスタマイズされた部品がフィットする様子をリアルタイムで確認できるだけでなく、費やす時間も大幅に削減できます。

「特に測定が難しい曲線形状を扱う際に、3Dスキャン の使用で新しい部品のための開発時間が大幅に短縮されます」とアシュトン氏は述べています。「さらに、最初のプリントがきちんとフィットすることが確信できますし、8時間かかるようなプリントを56回も待つ必要もありません」

「以前は、車の上でフォームや粘土を用いてフレアの彫刻をして、車全体を整備工場に持って行き、鋳型を外さなければなりませんでした。ときにはそれを自分で行うときもありましたが、面倒で汚れますし、それは多くの化学物質を取り扱う作業でした。しかも、デジタルの世界では、フレアの片方のデザインができたからそれをミラーリングして反対側のフレアにしようなんてこともできますが、鋳型を使用したアナログの世界ではそんなことはできませんので、私はその鋳型の作業を2回行わなければなりませんでした」

Source Graphicsで3Dソリューション・リーダーを務めるアニーシ・ジョシ(Aneesh Joshi)氏は、将来の自動車産業において、3Dスキャン技術の可能性は大きくなる一方だろうと考えています。「私達の業界には今現在も充分に満たされていないアプリケーションが本当にたくさん、それこそ海のようにありますが、ハンドヘルド3Dスキャナなら対処できるはずです」と彼は言います。「アシュトン氏のソリューションに協力できたことを嬉しく思います。カスタマイズされた素晴らしい部品をRuffianの車に装備するためのソリューションの紹介ができて、本当によかったです」

過去数か月にわたって、アシュトン氏は車のヘッドライトに始まり、シートベルトのバックルやフェンダー、さらにサイドスカートまですべてをカスタマイズさせたりして、車の作業を続けてきました。

Artec Space Spiderは、このシートベルトクラスプの細部を金属製の刻印に至るまで、すべてキャプチャしました。

「このヘッドライトは、新しいToyotaのLEDヘッドライトコンポーネントとSuperformance のGT40ボディを組み合わせることで、クラシックなレーシングカーの外観をモダンに変換させてくれるんです」と彼は説明します。

このヘッドライトバケットの内角と曲線は、正確な測定のためにキャプチャされました。Artecスキャナなしでは、特に困難な箇所です。

3Dスキャンを使用する上で重要なもうひとつの利点は、作成されたモデルがいかに実物に近くなるかという点です。「スキャンは実際の寸法でコンピューターに送られるので、寸法の問題に直面することなく新しい部品をモデル化させ、印刷することができます。この方法は、測定を行ってからそれに基づいて構築し、それが正確な寸法になっているよう祈っていた以前の作業と比べて大幅に改善されています」 とアシュトン氏は言います。

組み立てられたヘッドライトのモデル

「データ処理されたモデルを見る瞬間は、私にとって格別な瞬間です!まるで魔法のようですから。現実の世界にあったものが、コンピューターの画面に表示されるようになって・・しかも、そのモデルは実物にそっくりですから!」

カスタムのヘッドライトは、まるで最初からそこにあったかのようにピッタリとフィットします。

また、アシュトン氏の仕事と生活の中で、3Dスキャンと印刷が変えてくれたことは車のカスタマイズだけではありませんでした。「私の彼女が先日アンティークのシャンデリアを購入したんです。キャンドルのような形をした電球ホルダー付きのね。そのホルダーの周りには、まるで本物のキャンドルのように滴っている、ニセモノのキャンドルのワックスが飾りとして施されているんです」と彼は説明します。「ですが、唯一あった問題は、その電球ホルダーは8つ必要なのに、1つしかついてこなかったことです。しかし、もうこんな貴重品の代替を世界中で探す必要はなくなりました。私はこのホルダーをSpace Spiderでスキャンをして、それをちょうど7個分、3D印刷して複製を作りましたからね!」

家具のカスタマイズされた部品の作成に成功し、また彼が手掛けた特級のレーシングカーがSEMA 2021で盛大なデビューを果たす予定のアシュトン氏にとって、3Dスキャンは彼に大きな変革をもたらしたと言えます。ちなみにSEMAは、自動車メーカー達が新しく革新的な製品をデビューさせるための世界最高峰の見本市のことです。「今はArtecスキャナの使用を重ねていく中で、まだ次々と新しいことを学んでいる最中ですが、すでに自分がスキャンをしたいと思うオブジェクトを自分でスキャンすることができるようになりましたから、これからもっといろいろな場面でそれを活躍させていきたいと思います」

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