3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec Eva 3Dスキャナを使って人間工学に基づいた骨格を作成

ベルギーの研究グループは、3Dスキャン、CAD、3Dプリントを使い、デザインをカスタマイズすることにより駆動可能な骨格の機能を向上させています。

Vrije Universiteit Brussel(ブリュッセル自由大学)のケビン・ラングロワ博士研究員は、私たちが生活を根本的に変える技術革命の瀬戸際にいると考えています。ラングロワ氏は駆動可能な骨格を始めとするウェアラブルロボットの開発に力を入れている同大学のRobotics & Multibody Mechanics (R&MM) research group(ロボット&マルチボディメカニクス研究グループ)の一員です。ラングロワ氏は、人は体を動かし続けられるようになり、ケアテイカーへの依存度を抑え、寝たきりになることによる二次健康被害のリスクを減少させるため、ロボット補助技術は医療費を削減する主要技術の1つになると考えています。

「骨格ロボットは、今後、私たちの生活を根本的に変えるでしょう」と、ラングロワ氏は言います。「この技術は、怪我から回復中のリハビリ患者や体力増強、日常生活におけるリスク低減や支援で優れた結果を出しています。」

R&MMが開発した調節可能な装具の付いた駆動可能な補助骨格MIRAD

この分野は著しい進歩がなされたにもかかわらず、「人類とロボット骨格をどのように完璧に統合させることができるか」という、重要な問題の1つが未解決のままです。機械工学の観点から突き詰めて言えば、「人類とロボット骨格をどのように完全に装着させるか」という点に絞り込まれています。

私たちは1人ひとり人体測定学的(手足の寸法とその能力)および生体力学的(歩き方)に異なるため、これは簡単に解決できる問題ではありません。この2点の違いは、骨格をカスタマイズするのが最良であることを示唆しています。

R&MMの経験が示す通り、既製品は最善策ではありません。当初、このグループは研究のために、ストラップや金具で体に装着できる調節可能な装具を購入していました。しかし、これらの金具では適切な場所に装着できず、骨格を効率的に動かすことができませんでした。

そこで、3Dスキャナを使って個人の骨格をスキャンし、装具をデザインしたところ、極めてうまくいきました。具体的には、人体とロボットの間の接続部を3Dスキャンしました。これにより、使用者に不快感をもたらすことなく、装着力と骨格の強度が増すことができました。この研究のため、グループはArtec Eva高精度3DスキャンをArtecのゴールドパートナーである4C Creative CAD CAM Consultantsから購入しました。

「現在、この分野の研究はまだ広く浸透していません。これまで、ほとんど研究はこれらの機械の基礎である駆動と制御に焦点を当ててきました。これからは、人とシステムをいかに統合するかという時代に突入します。」と、ラングロワ氏は言います。「そのため、R&MM研究所では、3Dスキャン技術を使って新型ソリューションを開発することにしました。」

すねのデジタルモデル。Artec Eva3Dスキャナを使用

「Artec Evaを使うことにより、調節可能な装具よりも優れた、使用者ごとにカスタマイズした装具を設計、製造することができます。」と、ラングロワ氏。「Evaスキャナでは、患者のデジタルイメージを素早く(5分未満)正確にキャプチャします。この3Dスキャナを使うと、石膏型を使用した場合よりも短時間かつ簡単に装具を作ることができます。」

MIRAD骨格は両脚の補助となるよう、腰、膝、足首の関節をサポートします。生物力学の研究により、歩行中の脚を補助するために被験者の関節(足首、膝、腰)にかけるトルク(または力)を推測することができます。この情報と痛圧閾値(PPT、即ち、人が特定部分に痛みを感じずに堪えられる最高圧力)により、装具のプロトタイプを設計することができます。

このアクチュエータの優れた点は、回転可能な弾性部品である可変プレテンション付きバネが電気ドライブと並んで取り付けられているところです。これは駆動型骨格に最適な配置で取り付けられており、エネルギー蓄積、最大電力供給量増、耐衝撃性、低出力インピーダンスを実現しています。従来の固定型アクチュエータ(ギヤ付きドライブ)とは異なり、この高度アクチュエータは、使用中に外力がかけられた時に、ターゲットポジションから逸脱しても問題ない作りとなっています。

「Artec Eva 3Dスキャナを使うことにより、これらすべての特徴をコンパクトな人間工学に基づいた装具で実現することが可能になりました」と、ラングロワ氏は言います。

R&MM研究所で被験者のすねを3Dスキャン中

ラングロワ氏は、装具をカスタマイズするため、まず、すねなど、スキャンするエリアを選びます。次に、装具を取り付ける被験者を1、2名選びます。被験者をスキャンし、データはArtec Studio 3Dソフトウェアで処理します。

「Artec Studioを使えば、スキャンデータからSTLファイルを生成することは簡単です。」と、ラングロワ氏。「重要なのは、モデルに穴などのない高精度のスキャンデータを収集することで、これによりスキャンデータの位置合わせが簡単になります。シャープメッシュ化ツールはスキャンデータを正確にメッシュ化し、最終モデルを生成します。直観的なインターフェースと便利なツールを搭載したArtec Studioソフトウェアを使うことにより、科学者やエンジニアはウェアラブルロボット分野の研究を深めていくことができると確信しています。」

カスタマイズした装具プロトタイプのデジタルデザイン

後処理が完了したら、STLファイルをCADソフトウェアにエクスポートし、ピッタリと装着できる装具を設計します。最後に、添加剤製造機を使って装具を制作します。装具を3Dプリントしたら、炭素繊維とエポキシ樹脂により装具を強化します。

石膏型を使用する場合と比較し、3Dスキャンと3Dプリントの使用はファイルにデジタル記録を残せるため、特に便利です。デジタル記録があることは、デザインの観点から非常に有用で、ロボットを人にピッタリと装着させることができます。また、3DプリントなどのCAM技術を使えるため装具を制作、製造する際の自由度が増します。これにより、制作費用を削減し、製品の品質と有効性を向上させる可能性があります。 

このデザイン方法によるメリットを明らかにするための実験が現在行われています。「これらの実験の目的は、被験者のデジタル記録に基づき装具をカスタマイズすることによる有効性を明らかにすることです。」と、ラングロワ氏は言います。「将来的には、他人の目には分からない、そして装着している本人にも分かりにくい骨格装具を完成させたいと考えています。3Dスキャン技術はこの夢を叶えてくれるツールです。」

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