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フォトグラメトリとは

2022年 5月 5日
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概要

フォトグラメトリとは、写真から信頼性のある寸法を推し測る一連の作業のことです。我々は何世紀もの間、この手法を何らかの形で利用しており、地球の表面などを把握する際に役立ててきました。今日では、フォトグラメトリは多くの産業において極めて重要な役割を担っています。そこで、フォトグラメトリ、およびその利用法の概略的な把握のための入門書をここに用意しました。

なぜフォトグラメトリなのか
カメラの幅広い普及により、エンジニアリングやCGIへの使用などの目的で、より多くの人々が3Dモデルを比較的簡単に作成できるようになりました。
データのキャプチャ方法とは
CGIフォトグラメトリ用に準備された撮影場面でカメラを使用するか、もしくは測量関連の用途のために設計されたフォトグラメトリ用機材とカメラを併用して行います。
フォトグラメトリの利用者は
建設事業に携わるエンジニア、文化遺産保全に携わる考古学者、映画やゲーム業界のプロのCGI製作者、マッピング専門業者、測量士などがその数例です。

はじめに

フォトグラメトリは多岐にわたる概念です。長年の間に徐々に普及し、多くの、それぞれ独特な用途で利用されています。ここでは、フォトグラメトリの基盤となる一般的な考え方をご紹介します。具体的には、その利用方法、一般的な適用例の一部、よく使用されるソフトウェア、フォトグラメトリに適した状況、そして、利用を避けたほうがいい状況についてご説明します。

それでは、用語の定義から始めましょう。

フォトグラメトリの定義

フォトグラメトリとは、写真から信頼性のある寸法を推測する一連の作業のことです。この定義は少し単純化し過ぎたように聞こえるかもしれませんが、その語源がこれを裏付けています。"Photos"はギリシア語で光、"gramma"は書くことや描くこと、そして、"metron"は測ることを意味するのです。

電磁波エネルギーやその他の現象のパターンの測量で採用される、フォトグラメトリの少し違った定義をご存じの方もいらっしゃると思います。これは、分野によって、その定義が写真のみでなく、その他のマルチスペクトル画像のデータをも含むためです。

キーポイント

フォトグラメトリとは、写真から信頼性のある寸法を推測する手段です。

結局のところ、基盤となる基本原理は一緒で、画像の分析や解釈によって物体の信頼性のある情報を得ることなのです。多くの場合、使用される画像はカメラ、大抵はDSLRにより撮影された普通の写真です。ここでは、この定義を採用します。

それでは、ここで犯行現場の、対象物の隣にスケールが設置されているような、昔ながらの写真を思い浮かべてください。こういった写真はフォトグラメトリに使用可能でしょうか? 確かに、写真にある物体の測量手段は提示されているようですが…。

いえ、実は、提示されていないのです。この点について、次にご説明します。

フォトグラメトリの方法とは

フォトグラメトリとは、写真から信頼性のある寸法を推し測ることであると定義しました。ここで、「信頼性のある」という表現が非常に重要なのですが、それは、実のところ、信頼性こそがフォトグラメトリを利用する目的であるからです。

先ほどの犯行現場の例に戻り、隣に物差しのある地面の足跡の写真を想像してください。定規の付いた物差しがあるとしても、その写真から確信の持てる靴のサイズを見極めることはできません。足跡が盛り土の上に曲がって付いていれば、上からは実寸よりも小さめに見えるはずです。

足跡が曲面上の盛り土に付いていれば、この視点からでは実寸よりも小さめに見えるため、この写真からの測量は信頼できないことになります。

正確な測量をするためには、サーフェスの曲がり具合を考慮すべきです。しかし、カメラが足跡の直上に下向きで設置されていると、地面の外形を記録することはできません。

それでは、フォトグラメトリはどうやってこの問題をうまく切り抜けるのでしょう?

簡単に答えるとすれば、異なった視点や角度から撮影された、内容の重複する写真を使用すれば良いのです。

フォトグラメトリは、撮影場面を違った位置や角度から撮影した、内容の重複した複数の写真を使うことにより、その場面にある物などの寸法を推測するのです。

大事なのは視点なのです。

フォトグラメトリは視点とその解釈が主となる手法です。フォトグラメトリは、本質的には写真の撮影過程を逆に辿ります。写真撮影がオブジェクトや撮影場面の情報を取得して二次元の画像へと平面化するのに対し、フォトグラメトリはこれを逆に行います。二次元的に表された、画像からの手がかりを利用して三次元モデルを構築するのです。

しかし、実際にはどうやるのでしょうか。

カメラが人間の目と同じように物体を捉えることはご存じですね。例えば、レンズに物体が近づくほど、その物体は大きく見えます。実際の例としては、真っ直ぐな道が、その幅が同じであるにもかかわらず、遠くになるにつれてだんだん細くなっているように見える現象が挙げられます。

この更に詳しい説明が、アルブレヒト・デューラーの一五二五年の著書、『測定法教則』に掲載されています。その中では、二人の男性が幾何学的に正確な弦楽器リュートのドローイングの製作を試みています。二人は窓のようなものの前のテーブルにリュートを置いていますが、窓部分には窓ガラスではなく、キャンバスを設置しています。二人はこの『絵画』を見る人の視点の先にある壁の一点に紐を固定し、その紐を解放された窓を貫くように通します。

幾何学的視点を説明するアルブレヒト・デューラー著『測定法教則』所収の一五二五年製の版画。フォトグラメトリはこの考え方を利用し、二次元の画像から三次元のデータを推測します。

そして、紐のもう片方の端をリュートの異なった箇所へ移動させ、それぞれの箇所に対する窓の地点での紐の位置を記し、窓枠内のキャンバス上での紐のそれぞれの位置に点を描いていくのです。その結果、キャンバス上に現れるのは、幾何学的に正確なリュートのドットマトリックスなのです。

フォトグラメトリはこの法則にのっとり、物体の実寸や物理的状態を推測します。必要な空間の情報を提供するために充分な枚数の、内容の重複する写真を使用すれば、物体や場面の3Dモデルでの再構築が可能なのです。

三角測量

内容の重複した画像の存在がフォトグラメトリのカギとなります。複数の画像の中の同じ箇所を見出し、それぞれの写真を撮影したカメラの位置や方向、焦点距離、レンズ歪みやその他の変数を考慮すると、その箇所の三次元空間での位置の見極めが可能となります。これが、三角測量と呼ばれる方法です。

三角測量では、内容の重複する写真内の共通の箇所を見出した上で、その箇所の三次元空間での、カメラの実際の設置場所に対する相対的な位置を見極めます。

一つの箇所が、異なった既知の位置から撮影された二枚以上の写真上で確認された場合、二つのカメラの位置からその点の方向へ想像上の線を引くことができます。その上で、線同士の交差する箇所を数学的に測定するのです。一点に集中する線により、目標となる点のXYZ座標が明らかになります。十分な数の点があれば、撮影場面のモデルを再構築できるのです。

実は、人間はこれと同じことを本能的に行っています。我々は、本質的には、奥行きや距離の把握に役立つ、頭に付いている少し離れた二つのカメラと共に動き回っているのです。

測量と方向

しかしながら、注意しておきたいのは、フォトグラメトリによるモデルからは大きさや広さの把握はできますが、実測の情報は分からないことです。モデルの測量には、最低一ヶ所の既知の距離の情報が必要なのです。

これは、我々の脳が視界にある物体のサイズを憶測するために、すでに分かっている物体の情報を必要とすることに似ています。写真の中のビルが、最初は原寸大に見えたものの、コインを隣に置くことでミニチュアだと判明することもあるのです。フォトグラメトリでは、そのコインに当たるのがスケールバーになります。

フォトグラメトリでは比率の把握はできますが、実測の情報は分からないのです。T型の目盛り付きのスケールバー無しでは、このクランク軸の大きさ(小ささ)を知ることはできないのです。

スケールバーは目盛り付きで、ターゲットと呼ばれる印刷されたマーカーの付いた直線状のバーです。スケールバーのターゲットはコード化されています。これは、ソフトウェアがそれぞれのターゲットを個別に読み取ることができる、という意味です。コード化されていないターゲットは(写真のクランク軸上にあるもののように)、画像を正確に並べて全体のモデルを作成する際に役立つ、高コントラストの基準点を提供するだけです。個別に識別することはできません。

スケールバーのターゲットは既知の距離により区別されるため、画像の測量が可能となります。整合性と精密性を確実なものとするため、スケールバーは温度変化によって寸法が顕著に変わらない材料で製造されています。

ターゲットは写真撮影前に撮影現場近辺に設置され、写真同士を並べた際に、内容の重複する画像内で一致する、揺るがない基準点となります。

フォトグラメトリ用のソフトウェアは、写真内のコード化されたターゲットを自動的に認識して一致させ、その情報を基に写真を揃えて並べ、モデルの方向付けをします。コード化されていないターゲットも、ソフトウェアがモデルの処理を完了した際に、その正確さを確認するために利用されます。

整合性と品質がカギ

フォトグラメトリの可能性を広げることには、多くの要因が関係してきます。製作物の品質は、カメラやレンズなどのハードウェアで決まります。そして、お分かりかもしれませんが、解像度や鮮明さ、領域の奥行、被写界深度、その他の写真の品質に関わる要素も同様に大切です。このことについては、後ほど、もう少し詳しくご説明します。

しかし、品質の他にも、写真の撮影方法も同じくらい重要となります。

大事な点は、オブジェクトが完全にキャプチャされていることを確認することです。お勧めの便利な方法は、オブジェクトの周りに数個の円を描き、カメラをオブジェクトの周りにドームの形を形成するように設置して、異なった距離から写真を撮ることです。小さめのオブジェクトに対しては、撮影する写真の数も自然と少なくなります。しかし、どんなケースであっても、できる限り良い状態のモデルを作成するためには、すべての写真に、オブジェクトの全貌がピントの合った状態で写っていることを確認してください。

できる限り良い状態のモデルを作成するためには、オブジェクト周りに数個の円を描き、規則正しく、かつ距離の異なる位置から写真を撮ることがおすすめです。

例えば、建物のファサードなどの、全体を取り囲むことのできないほど大きなオブジェクトや場面に対しては、建物正面に平行な直線上方向にカメラを移動させる方法もあります。場面全体をキャプチャするには、何度か行き来しなければならない場合もあります。

キーポイント

フォトグラメトリは、写真撮影のプロセスを逆に辿ります。複数の写真の内容と幾何学的観点に関連する原理を利用して、二次元のデータから三次元のモデルを製作することができるのです。

空中でのフォトグラメトリ(空中写真測量)では、カメラはドローンなどの飛行手段に下向きに設置されます。建物や木などの、直立するオブジェクトの側面のキャプチャが必要なら、その表面を適切にキャプチャするために、カメラを若干傾けることも良い方法と言えます。ここでもまた、整合性がカギとなります。

フォトグラメトリ・アルゴリズムの種類

多くの点で、フォトグラメトリは人間の視界のように機能すると言えます。それぞれの目は奥行きと距離を把握するために、内容の重複した写真を繰り返し記録します。同じように、フォトグラメトリを有効に活用するためには、要求されたデータを推測できるような、撮影場面の十分な情報を含むよう、上手く撮影された写真一式を用意する必要があります。

しかし、人間とは違い、フォトグラメトリには無限に写真を撮るような贅沢なことはできません。情報を収集するために必要な画像の質は、オブジェクトや撮影場面の大きさや複雑さに因る上、さらに重要なことかもしれませんが、そのプロジェクトのニーズにも左右されるのです。

そのため、フォトグラメトリの背景となる考え方には変わりはありませんが、そのアルゴリズムはプロジェクトのニーズを基に、大きく二つに分類されます。

エンジニアリングのためのフォトグラメトリ

品質検査用、リバースエンジニアリングやその他あらゆる状況でオブジェクトのモデルを製作しているエンジニアの方なら、画像のすべてのピクセルの情報は必要ありません。例えば、直線を引く場合なら、二つの点の位置の情報があればいいのです。

これが、メトリックフォトグラメトリとも呼ばれる手法の背景にある考え方です。この種類のフォトグラメトリの注目点は精密さです。写真内の特定の重要な点の相対的な位置をできる限り正確に見極めることにより、正確な計測値や推測値を得ることが目的です。

メトリックフォトグラメトリでは、そのアルゴリズムは数箇所の重要な点を基にモデルを抽出します。目的は正確さであり、すべてのサーフェスをキャプチャすることではありません。

そのため、エンジニアは、アルゴリズムが認識できるようなターゲットを注目領域に設置します。アルゴリズムは、ターゲットを利用してモデルを構築します。その結果、生成されるのは重要な点のみで形成されるスケルトンで、すべてのサーフェスの高密度のポイントクラウドではありません。

ターゲットはオブジェクトに固定され、複数の写真内で内容の重複する領域を見出して、写真を正しく並べる工程を行いやすくします。

そうしたターゲットポイントにより、オブジェクトの外観の大きさ、形状と位置はきちんと正確な形で明らかになります。ターゲットポイントは、部分的な地図の作成のための距離、領域や立面のようなものまでの推測や、その他の専門的な用途のためのボリューム、断面の推測にも役立ちます。

カラーの3Dモデルのためのフォトグラメトリ

対照的に、ゲームの製作や映画のCGI、文化遺産保全の分野では、現実に存在するオブジェクトの実物そのままのレンダリングが必要となります。一般には、より多くのピクセルや詳細な情報をモデルに組み入れるほど、その品質が上がるのです。こういった産業に従事する専門家の方々は、大抵の場合、最高品質の写真撮影機材をお持ちなので、いつでもフォトグラメトリを実行できる状態にあるのです。

違いを確かめよう:フォトグラメトリによるモデル(左)と、その隣にあるのは、テクスチャのキャプチャも可能なArtec Leoによる3Dモデル

その代わり、完成したモデルは通常、不完全なものとなります。平均的な3Dスキャナは、光沢があったり、透明であったり、黒いサーフェスのスキャンに手こずることがあるものの、フォトグラメトリを採用する場合には、それに比べて不自然な箇所やノイズの量がかなり多くなります。詰まるところ、その結果としての完成品は、高解像度のテクスチャを有している反面、ノイズが多く不完全なジオメトリを持つモデルとなります。

現実に即した正確なモデルを生成するため、カメラからのテクスチャを組み合わせた3Dスキャナによるジオメトリ

このような種類のプロジェクトなら、最適なモデルを作成するためにはフォトグラメトリと3Dスキャナを併用したほうがいいでしょう。この点については、3Dスキャナのフォトグラメトリとの併用についてのセクションで、更に掘り下げます。

キーポイント

フォトグラメトリには二つの種類があります。通常エンジニアリングで採用される測量テクノロジーに関するものと、CGIですぐに使用可能なレベルの、非常に優れた、本物のような現存のオブジェクトの3Dモデルを製作するためのフルカラーの視覚化です。

フォトグラメトリ用ハードウェア

これまでご説明したターゲットとスケールバーの他に、フォトグラメトリのプロセスには写真撮影用機材の役割も重要です。

フォトグラメトリの成果物の品質は、そのプロセスで使用される画像次第なのです。解像度や光の具合、被写界深度などの要素は、成果品となるモデルの正確で信頼性の高い測量には欠かせない存在です。きめ細かく、鮮明な写真こそが命なのです。

写真撮影用機材を調べているとキリが無くなり、あたかも迷宮に入り込むようになりがちですが、ここで是非ご紹介したい、役に立つコンセプトが若干あります。ただ、写真家の方や、カメラの使い方を熟知している皆さんは、すでに一歩先を進んでいらっしゃいます。焦点距離や絞り値などの用語が仕事や趣味の一部である方も、その域に達しています。そういった方は、次のセクションを飛ばして、フォトグラメトリ用アプリケーションの説明へとお進みください。

センサー

カメラには、携帯電話のカメラやCCTV、Go Proといったものから、本格的なビデオ撮影用機材に至るまで、様々な形状やサイズのものがあります。プロジェクトにどの種類のカメラがどの程度適しているかは、センサーの大きさで決まるとも言えます。

センサーのカメラに対する役割は、網膜の人間の目に対する役割と同じです。センサーはレンズを通して入り込んでくる写真を記録し、実際に写真上にキャプチャする情報量を決定します。センサーが大きいほど、より多くのポイントがキャプチャでき、より詳細なディテールを取得できます。

カメラの中のセンサーは、レンズを通して入り込んでくる写真を記録し、画像のピクセル数を決定します。

そのため、小さい全自動カメラでは、適度な光の状態で無難な写真が撮れますが、フルサイズのセンサーの付いた最上位機種のDSLRなら、3Dモデル生成用に使用できる、はるかに多くのピクセルを含んだ写真、すなわち、解像度のはるかに高い写真の撮影ができるのです。

センサーのサイズもクロップファクターという比率に影響します。小さめのセンサーはより少ない量しか『見る』ことはできないのに対し、大きめのセンサーは撮影場面からのより多くの情報を写真ごとに記録することができるため、二つの異なるセンサー上のレンズは、その形状は良く似ていますが、撮影場面の異なる部分のキャプチャを行います。

レンズ

レンズは、次に重要な要素です。光を屈折させ、カメラのセンサーへ当てるのがレンズの役割です。レンズはフォーカスの対象、露出、倍率や画像の画角の広さを決定します。

光を屈折させ、カメラのセンサーへあてるのがレンズの役割です。レンズは、画質に直接影響します。

レンズの片面は曲面をしたガラスで、もう片方はアパーチャーです。カメラのシャッターが開閉して、微量の光をレンズのアパーチャーを通じて微量の光をセンサーへ流すことにより、画像が記録されます。そのすべてが組み合わさって画像の特徴を決定するため、フォトグラメトリの際にはしっかりと考慮すべき対象となります。

焦点距離

焦点距離は、カメラのセンサーと、光線が集中するレンズ上の点の間のミリ単位の光学距離のことです。焦点距離は、画角や倍率を決定します。数値が小さい(焦点距離が短い)ほど視角は広くなり、倍率は低くなり、カメラは撮影場面からの、より多くの情報を記録することができます。フォトグラメトリでは通常、焦点距離は固定されています。

レンズの焦点距離により、倍率と視角、すなわち、キャプチャする撮影場面の情報量が決定されます。

アパーチャー(絞り値)

アパーチャーは、Fストップ(F-Stop)により表される数値であり、カメラに光を取り入れるためのレンズの絞り(開放)の度合いのことです。絞り目盛りの値ごとに、カメラに入ってくる光量は二倍になります。ややこしく聞こえるかもしれませんが、f-32のような大きな数値ではレンズの開放の度合いが小さく、小さい数値は大きく開放された絞り値を意味するのです。

アパーチャーにより、被写界深度、すなわち、キャプチャする撮影場面の情報量が直接決定されます。開放された絞り値では、焦点は写真の薄膜層に合わされ、他の部分はぼやけた状態になります。これは、肖像画のような写真の場合にうまく作用し、例えば、被写体にはっきり焦点が合い、背景がしっかりぼやけた、いわゆるボケた写真が完成します。この種類のボケは、フォーカスブラー(focus blur)というものです。

アパーチャーは被写界深度、すなわち、キャプチャする撮影場面の情報量を決定します。

フォトグラメトリでは、撮影場面のできる限り多くの情報に焦点を当てるべきです。画像がぼやけていると、写真をうまくつなぎ合わせることが難しくなってしまいます。

この流れで、もう一つの種類のぶれの説明へ移りましょう。被写体ぶれと呼ばれるものです。

シャッタースピードと被写体ぶれ

シャッタースピードとは、シャッターが開いてセンサー上に光を当てる時間のことです。これは通常、わずかな秒数で表されます。シャッタースピードは、センサーへの光量に影響するほか、被写体ぶれにも直接関係します。

シャッターが開いているときに、被写体、もしくはカメラが動くと、できあがった写真はぼやけます。この効果の分かりやすい例としては、ホバリング中のヘリコプターの写真において、シャッタースピードを充分に高くすると回転翼の羽根が停止しているように見え、遅くすると羽根の動きがぼやけて見えなくなることが挙げられます。

手持ち撮影で写真を撮る場合、シャッタースピードを充分高くすれば、カメラを持っている手のブレに対処できます。代案として、三脚を使って、カメラを完全に固定する方法もあります。

シャッタースピードは、被写体ぶれを決定します。シャッタースピードが速くなると、写真上の動きは停止して見え、遅くするとぼやけます。

最後に、フォトグラメトリでの可能な限り良質のモデルの作成には、これまでご説明したすべての要素を慎重に考慮すべきであることを付け加えておきます。

キーポイント

フォトグラメトリは、そのプロセスで使用する画像の品質に依存するため、写真の構想をしっかり持つことが大切です。画像の解像度や異なったレンズの性質、また、焦点距離やシャッタースピード、その他のカメラの設定もすべて、不可欠な役割を担っているのです。

フォトグラメトリ用アプリケーション

技術としてのフォトグラメトリが普及しているのは、その多様性とコストによるだけではなく、距離の長くなる作業で有効に機能するためです。それでは、適用例をいくつか見てみましょう。

大規模のエンジニアリングプロジェクト

空中でのフォトグラメトリ(空中写真測量)は、一般的にはエンジニアにより、大規模の建設事業に採用されています。

遠距離からのスキャンの正確さから、エンジニアは規模の大きな建設事業の計画や査定に、ドローンや航空機を使用したフォトグラメトリを行っています。例えば、フリーウェイの配置と設計への採用です。メトリックフォトグラメトリによるデータは、土木技師へ提供するための掘削量の計算や、地形に関する大事な記録の作成に利用されます。事業の進行状況を調べる際に、時間の経過に伴った、段階的な3Dレンダリングを用意することも重要となります。

映画やエンタテイメント

フォトグラメトリのおかげで、ゲーム業界や映画業界では、本物のような環境設定を作成する技能が向上しました。フォトグラメトリや3Dスキャナを組み合わせることで、映画製作者は、フォトグラメトリにより作成された色彩情報付きの正確な3Dモデルを基に、セットデザインを製作することができます。ゲームデザイナーも同様に、本物のような質の高い物品や、現実のような背景の製作が可能となりました。

法医学(科学捜査)

フォトグラメトリは犯行現場での取り調べや科学捜査に欠かせません。

メトリックフォトグラメトリは科学捜査や犯行現場での調査に無くてはならないものです。事件において、小さな詳細情報が物を言うことは多いのです。高精度な測量によって犯行現場や事故現場を正確にキャプチャできる技術は、裁判のためばかりではなく、さらに大切なことかもしれませんが、構築環境をより安全なものとするためにも重要なのです。

例えば、写真に写った道路表面のタイヤの痕跡を分析することにより、検査官が、そのスリップ痕が女性の運転していた車の大きさや幅に合っているか、それに、その車にぶつかり女性にケガを負わせた、別の車の視点からの女性が運転していた車の位置と合致するか、ということを判断できたケースがあります。メトリックフォトグラメトリは、事故発生時の二台の車両の位置に関する相反した証言が存在する状況に解決策を見出すために、決定的な役割を果たしたことを立証したのです。

測地術

空中写真測量は、地方自治体や土木技師が、測地術のためによく利用します。

メトリックフォトグラメトリは、建設作業員や建築士、地方自治体が領地の境界を見極め、建設作業の計画やデータを分析するために利用されます。人工衛星の写真からもこういった情報が入手できますが、空中写真測量の方が、特定の注目領域に関する、より正確な情報を提供できる場合がよくあります。

不動産業界でのフォトグラメトリ

フォトグラメトリは、家屋の仮想的なモデルの製作に用いられ、購入を考えている方の閲覧にも利用されます。購買者の多くはすでに、投資先を決定するために、オンラインでの商品情報を利用されています。そして、現在では、コロナによる生活様式の変化により、多くの不動産ビジネスのオンラインでの活動が、より活発になっています。わずかな投資で現代のフォトグラメトリを採用することにより、不動産業者は販売用家屋の仮想的な体験方法を開発することができます。

マッピング

ドローン、航空機、人工衛星で撮影された写真の使用により、フォトグラメトリは地形の3Dマッピングにも利用されています。飛行機や潜水船で撮影された高画質の写真により、水中を含む、手や目の届かない領域のモデルも、以前より速く製作することが可能です。

ドローン、航空機、人工衛星で撮影された写真は、地形の3Dマッピングにも利用されています。

Google Earthは現在のところ、地形の正確な画像を作成するためにフォトグラメトリを利用した、最も意欲的なプロジェクトです。Googleは、ストリートビューや空中写真、衛星画像など、複数の情報源からの数え切れない数の写真を使用しています。それらすべてを組み合わせた上で、道路や車線区分線、建物や川などのオブジェクト間の正確な距離を含めた、特定の場所の詳細を表示しているのです。

考古学

考古学では、特定の区域をマッピングしたり、特定の場所のレイアウトや構造を理解する技能が必須となります。考古学者の方は、メトリックフォトグラメトリにより、特定の領域のマッピングや、注目領域の記録を素早く正確に行うことができます。3Dレンダリングをシェアできることで、現地にいない、他の考古学者との共同作業も簡単になります。

遺産保全は、フォトグラメトリが最も一般的に使用される分野の一つです。

キーポイント

フォトグラメトリは、多くの産業で、様々なシナリオの中で使用されます。主に、測量に関連した場面や、現存のオブジェクトのモデル化に適用されます。

フォトグラメトリの採用を控えたほうが良い場合

フォトグラメトリの採用を決定する際に、頭に入れておいたほうが良い『落とし穴』があります。簡単に言うと、測量の採用の有無は、プロジェクトのニーズによって決まるのです。

専門的機材を使わないメトリックフォトグラメトリ

プロジェクトの目的が正確な測量を行うことで、色彩の情報が特に必要のない場合は、フォトグラメトリの採用は、測量への適用だけのために設計された、Hexagonの最上位機種のフォトグラメトリシステムのような性能の良い機材をお持ちの場合のみに控えるべきです。このような機材には、作業に充分な装備のためのデジタルカメラ、ターゲット一式、正確な目盛り付きのスケールバーが含まれています。

測量関連の用途のために設計された、フォトグラメトリ機材一式のセット

但し、その正確さの反面、性能の良いスキャナと比べると、そういった機材でさえもまばらなポイントクラウドしか生成できないことを覚えておいてください。

高密度ポイントクラウドで高精度の正確さを

そのため、正確さのみならず、高密度ポイントクラウドが必要となる場合なら、最大0.1㎜の精度を持ち、毎秒最大200万ポイントのキャプチャ及び同時処理の可能な、Artec Evaのようなスキャナの方が良い投資となるでしょう。

事実、構造化光スキャン技術を採用したEvaは、黒色や光沢のあるようなサーフェスを含め、ほぼすべての種類のオブジェクトを正確にキャプチャできる、素晴らしいオールラウンドなソリューションなのです。

最上位機種のカメラ無しでの色彩やテクスチャのデータ

一方、フォトグラメトリの目的が測量に関係なく、主にテクスチャをキャプチャすることであれば、まず、手元にあるフォトグラメトリ用のカメラ機材が、Artec Space SpiderやArtec Leoのようなテクスチャのキャプチャ用スキャナよりも、高画質の撮影のできる品質であるかを最初に確かめた方が良いでしょう。

フォトグラメトリの目的が、テクスチャをキャプチャすることであれば、使用するカメラ機材で撮影する写真が、Artec Space SpiderやArtec Leoのようなテクスチャのキャプチャ用スキャナよりも高画質であるかどうかを確かめましょう。

映画やゲームデザインに従事する方々は、通常、最上位機種の写真撮影機材をお持ちです。そのような専門的な機材なら、平均的な3Dスキャナのカメラで撮ったテクスチャの質を上回るような、極めて高画質の画像の作成がおそらく可能となります。

反面、この種類のフォトグラメトリはターゲットを必要としないため、不正確さが生じやすくなります。そのため、高品質のカメラであっても、テクスチャを組み合わせた正確なモデルの生成できる、プロフェッショナル用3Dスキャナとの併用が良いでしょう。すべてのArtec 3Dのスキャナは、ターゲット無しでのキャプチャが可能であるため、この種類のフォトグラメトリと並行しての使用にふさわしい選択肢となります。

フォトグラメトリの一般的な欠点

総合的に見れば、フォトグラメトリの欠点は、時間が掛かることと、最大限に活用するためには専門的な知識が必要なことであり、これらを克服したとしても、条件が良くなければ、期待したモデルを作成することができない場合があります。何十枚、時には何百枚もの写真を一枚ずつ、それぞれに十分な画質と内容の重複があることを確認しながら撮影する必要の生じる場合もあります。

それに加え、撮影場面の光量を調整する作業をしない場合は、写真を連続して撮る間にライティングの状態に大きな変化が出ないよう、確認する必要があります。たった一枚の写真の中でオブジェクトに影が掛かっていても、最終的なモデルに反映されてしまうのです。

フォトグラメトリには均等で適度なライティングが必須であるため、それに応じた撮影場面での事前準備が必要なのです。

これに対し、ほとんどのハンドヘルド3Dスキャナは自ら光を発し、スキャン時にオブジェクトを照らすことができます。そのため、スキャンによる良質のテクスチャデータの取得が目的であれば、フォトグラメトリ時に比べれば、ライティングをそれほど気にする必要はありません。ハンドヘルド3Dスキャナならば、撮影場面でのスキャンへの準備は比較的少なく済みます。

キーポイント

高度な正確さを持つ高密度ポイントクラウドが必要であれば、3Dスキャナの使用が望まれます。フォトグラメトリは写真のようなテクスチャが必要で、3Dスキャン内蔵のものよりも性能の良い、高品質のカメラをお持ちの場合に向いています。測量のためのフォトグラメトリの採用は、専門的機材をお持ちの場合や、まばらなポイントクラウドで十分な場合のみにとどめてください。

Artec Leoのようなスキャナは、スキャニングの際に即時にレプリカを生成できるタッチスクリーンを採用しており、スキャン工程をすべて手元で完了することができます。この機器には、自動処理機能、内蔵電源、そして、二台目の機器へのデータのストリームが可能なWifi接続機能が搭載されています。Artec Leoならば、スキャニング作業はビデオ撮影の作業量と変わりません。

反面、フォトグラメトリにも独自の強みがあります。3Dスキャナよりも安価での採用が可能です。通常、数メートル以上の大きな領域のスキャンにも向いています。

フォトグラメトリの一般的な欠点

結論から言うと、テクスチャ取得が一番の目的ではなく、最小限のノイズと高い精度で高密度ポイントクラウドを生成することの方が大事である場合は、3Dスキャニングが適格となります。最上位機種の3Dスキャナなら、極めて迅速なスキャニング機能及び自動処理機能を搭載しており、わずか数ミリのポイント精度のスキャンが可能となります。

しかしながら、プロジェクトに実物そっくりのテクスチャや本物のようなモデル、及び最上位機種の撮影機材が必要であれば、フォトグラメトリの方が合っています。テクスチャ用のフォトグラメトリでの注意点は、ジオメトリは不完全なものとなることです。それは、テクスチャが必要な場合にはより多くの写真を撮ることになりますが、その写真はターゲット無しのものとなるからです。そのような写真は、多くのノイズを含む上に不自然で、正確さも欠くことになります。

本物と見紛うテクスチャや、真に迫ったモデルを生成したい場合で、プロフェッショナル用の機材をお持ちの場合はフォトグラメトリが良い方法となりますが、3Dスキャナのようなジオメトリの正確さは期待できません。

それでも、フォトグラメトリと3Dスキャンデータのそれぞれの利点の組み合わせで、期待通りのモデルの生成は可能です。その技術は、フォトグラメトリでArtec Evaを使用した、息を飲むような車のモデルの製作過程を収めた、以下のビデオで紹介されています。

3Dスキャンからのジオメトリデータは、最上位機種のカメラからのテクスチャと組み合わせることで、とても正確なレンダリングが可能です。

もしくは、一例として、ハンドヘルドのArtec Space Spiderを使用してキャプチャした、ランニングシューズの驚くようなレンダリングをご覧ください。完成したモデルは、三百以上の写真とスキャンデータを組み合わせたものです。その色彩は鮮やかで、ディテールの細かさは極めて優れています。

二つの方法の併用は最適なソリューションであり、頑固な産業界のプロフェッショナルにも愛用されています。例えば、バラク・オバマ大統領の周りに配列されたカメラで撮影された画像は、Artec Evaのスキャンデータと組み合わされ、史上初のアメリカ大統領の3Dポートレートの完成につながりました。

カメラは綿密で詳細な情報を含んだテクスチャをキャプチャし、3Dスキャナはその精密性により、ノイズを最小限に抑えたテクスチャを纏った構築物を作成することができました。

キーポイント

テクスチャデータ用の最上位機種のカメラと、ジオメトリデータ用のプロフェッショナル用3Dスキャナを併用した上で、Artec Studioなどのソフトウェアを利用して二つのデータを組み合わせれば、驚くような美しさのテクスチャ、最小限のノイズ、きわめて正確なジオメトリなどを持つモデルを最良の形で作成することができます。

フォトグラメトリ用ソフトウェア

市場には、あらゆる種類のフォトグラメトリ用ソフトウェアが販売されています。少し調べるだけで、無料のアプリから、数千ドルもするソフトウェアパッケージまでの製品を探し出すことができます。ここでも、ニーズと手元にある機材によって、購入すべきソフトウェアが定まります。

フォトグラメトリをこれから利用されるのであれば、3DF Zephyr、Meshroom、もしくはVisual SFMのような無料のソリューションから始めるのが良いでしょう。しかし、こういったソリューションの機能は限定的で、動きが遅かったり、生成データの正確性が劣る場合があります。追加のプラグインのインストールによって、カラーのメッシュ化されたテクスチャの生成が可能となる場合もあります。

更なる機能が必要であれば、Elcovision、iWitnessやPhotomodelerのような総合的なソフトも選べます。MetaShapeやPix4D、Reality Captureも普及している製品です。

計測のためにフォトグラメトリを採用するなら、Hexagon社製のAicon 3D Studioのようなソフトウェアパッケージを使用すれば、インテリジェントでパワフルなツールの利用が可能です。プラグインのインストールで、PolyWorksと接続することもできます。PolyWorksは広範囲に及ぶ3D計測機能を持つため、製造業を営む企業でのほぼ全ての業務の遂行に充分なソフトです。

プロのCGI製作者や最高品質のジオメトリやテクスチャがお望みであれば、Artec Studio 16を使用すれば、完璧なジオメトリや極めて高品質のテクスチャを取得することができます。ソフトウェアは改良され、マッピングテクスチャを滑らかに3Dスキャナのメッシュ化データへ組み合わせることができるようになりました。

受賞歴のあるArtecの3Dスキャナは、非常に正確なスキャンが可能であり、ハンドヘルドモデルの一つであるArtec Space Spiderによる最大0.05㎜の正確性や、さらに、デスクトップ型スキャナのArtec Microによる最大10ミクロンの高精度性など、産業界を牽引するような高水準の技術を達成してきました。

Artec Studio 16の強力な機能であれば、高性能カメラによるピクセル単位で正確な写真と、測量業規準のスキャナからの3Dスキャナデータを自動的に組み合わせ、極めて本物のような3Dモデルを生成することが可能です。

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