機械技師向けベストCADソフトウェア
コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアは、異なる分野の様々な種類の工程で設計者やエンジニアに利用されており、設計、シミュレーション、製造、その他のあらゆる領域で業務を行っている方々の頼みの綱となっています。CADソフトウェアは、設計構想や草案の視覚化のみでなく記録にも役立ち、特許出願や設計の法的保護、適合性の検査を行うことが可能となります。
はじめに
コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアは、異なる分野の様々な種類の工程で設計者やエンジニアに利用されており、設計、シミュレーション、製造、その他のあらゆる領域で業務を行っている方々の頼みの綱となっています。CADソフトウェアは、設計構想や草案の視覚化のみでなく記録にも役立ち、特許出願や設計の法的保護、適合性の検査を行うことが可能となります。
基本的な設計及び製図用ツール一式にすぎなかったCADソフトウェアは、時を経て、遥かに複雑な作業にも使用できる機能を搭載するまでに進化しました。プロフェッショナル級のソフトウェアには、高度な計算やあらゆる種類の分析を実行するモジュールを装備されており、公差や素材、その他の極めて重要な技術的情報を提供することが可能です。
異なる技術分野に属する専門業者は、それぞれCADソフトウェアを航空力学、耐熱性、運動パラメータ、応力やその他の各分野に関わる特性のような設計面を分析するために利用しています。
本稿では、現在入手できる主要な機械技師向けCADソフトウェアの数種をご紹介します。その中で、ソフトウェアを選ぶ際に考慮すべき検討項目を始め、ソフトウェアそれぞれの利点と欠点、価格、主な機能を詳しく解説していきます。
機械技師向けのベストCADソフトウェアを選ぶには
ニーズに合ったCADソフトウェアを選ぶことができれば、将来的なフラストレーションからの解放に必ず繋がります。予算内での最高額のソフトウェアを購入したくなる気持ちは理解できますが、誤ったソフトウェアを選んでしまうと、購入のコストのみでなく、投資した時間も無駄になってしまうのです。ソフトウェアが期待した性能を発揮できなかったり、ワークフローに上手く適合しなかったり、さらにひどい場合では、その進行の弊害となってしまうこともあるのです。
また、ご自身の専門性の度合いに関わらず、主要なプラットフォームは一つずつ、時間を掛けて習得する必要があります。 そこで、その労力を少しでも軽減するために、以下に正しいCADソフトウェアを選ぶために検討すべき事項を列挙します。
そのソフトウェアは、期待通りの役割を果たせるのか
まず、検討すべき事項は、ソフトウェアがご自身のワークフローの要求する性能を有しているか。という点です。皆さんが設計、製造に携わっている場合でも、その他のあらゆる種類のアプリケ-ションシナリオに関わっている場合でも、業務を行う上で欠かせない特定の機能性が明確になるはずです。例えば、多角的なチームをお持ちの場合、購入しようとしているソフトウェアは共同作業を可能とするオプションを搭載しているでしょうか? 一つのプロジェクトにおいて、電気と機械のような、設計の異なる面を統合して、異なるバージョン管理を実現するオプションを装備しているでしょうか? そのソフトウェアは、ワークフローの高速化と設計品の標準化に役立つテンプレートや自動化機能を提供することができるでしょうか?
キーポイント
検討すべき点は、ソフトウェアがご自身のワークフローの要求する性能を有しているかどうかです。そのソフトウェアは、ご自身のワークフローに簡単に統合できますか?
また、ソフトウェアがご自身の製造工程においてどの程度役立つのか、についても考慮が必要です。例えば、積層造形の使用において、3Dモデルの設計、プリンティング、そして、検証に役立つ機能を搭載しているでしょうか? コンピュータ支援製造の際に使用できる機械加工、鋳型製作や圧延のための機能は搭載されているでしょうか?
以上が、ソフトウェアの選択の際に考慮に入れるべき、重要な疑問点及び検討項目です。
他社のソフトウェアとの統合
購入すべき、豊富な機能を備えたアプリケーションが見つかったとしても、機械技師の業務のかなりの部分は、CADモデリングソフトウェア上以外で行われることを忘れてはいけません。そのため、ご自身のワークフローの他のプラットフォームとの簡単な統合は可能か、若しくは許容レベルの最低限の互換性を備えているかどうかも重要な項目です。プラットフォーム間の互換性は、ご自身のチーム外部の業者が、品質検査やリバースエンジニアリングなどに異なるシステムを使用している場合の共同作業の際に役立ちます。ネイティブインテグレーションが利用不可能なソフトウェアの場合では、一般に利用されているファイル形式との互換性があることを最低、確認するべきでしょう。
カスタマーサポートとユーザーコミュニティ
もう一つの念頭に置いておくべき点は、問題が発生した際にサポートが容易に受けられるかどうかです。新しく導入したソフトウェアを取り扱う上で、生じる課題に対処するために役立つサポートや情報が豊富にあれば、後々の業務も極めて楽に進めることができるようになるはずです。
キーポイント
強力なユーザーコミュニティの存在により、利用可能なサポートや手助けの度合いを憶測することができます。
この点を探るためには、支援用資料の共有が行われている、活動中のコミュニティの存在の有無を確認することから始めるのも良いでしょう。分かりやすい製品取扱説明書やハウツー動画、質問が可能なフォーラムなどの豊富なサポート用資料があれば、新しいソフトウェアの活用の程度が大幅に向上し、ソフトウェアの可能性も大きく拡がることにもつながるのです。
機械技師向けベスト3D CADソフトウェア
SOLIDWORKS
ご要望に応じて、開発企業が実際の価格を通知
Windows
- 使い易さ
- 広範囲にわたる参考文献とユーザーマテリアル
- 工業製品開発を含む幅広い分野での利用
- 非常に入り組んだ形状を作成する際に問題が生じる、との報告有
- 大規模のCAD組立部品の取扱いに難あり、との報告有
Dassault Systèmes社の製品であるSOLIDWORKSは、CADソフトウェア分野ではお馴染みのブランドの一つです。様々な規模の商事会社、又は3D機械技師用CADや設計検証、データ管理の技術を身に付けようとしている方、若しくは起業家や初心者の方も使用できる、優れたソリューションです。このパワフルなソフトウェアは、現在まで三十年近くも市場で支配的地位に君臨し、3D設計やエンジニアリング向けに扱いやすい機能を提供しています。SOLIDWORKSには3Dモデリングや電気回路設計用のツールも付属しており、 複雑度の異なるパーツや組み立て部品の二次元ドローイング作成用の機能も搭載しています。更に、動作分析、応力分析、コストの見積もり、製造可能性の設計検証などを行う機能も搭載し、クラウドとの接続を有効にすれば、様々な共同作業用やバージョン管理用のツールも使用可能となります。また、シミュレーションを実行し、様々な適用状況でのモデルの物理的な、実際の挙動を分析することも可能です。
Siemens NX
ご要望に応じて、開発企業が永久ライセンス価格を通知
Windows、Mac、UNIX、及びLinux
- 高度で使用しやすいツールセット
- 複数のファイル形式も容易に取扱い可能
- CNC機械加工に使用可能なCAMファイルの取扱い可
- カスタマイズ可能:機能拡張のためのプラグインの構築も
- 金属薄板、自由形状モデリング、運動学など、異なる目的用のモジュールを搭載
- 習得の難易度高
- 高価
Siemens NXは、機械技師向けソフトウェアの業界リーダー的存在として、広く認められています。その性能の数々を見ていただければ、その理由はお分かりでしょう。このソフトウェアの機能性は単なるCADツールの域を超え、共同作業や情報伝達のための分かりやすいソリューションや、技術解析や設計、トポロジー最適化などのための高度な機能も搭載しています。最も要求度の高い、複雑な種類のプロジェクトにも充分に対応できる機能が揃っており、自由形状サーフェス設計、パラメトリックソリッドモデリング、ルーティング、機械配管や電気配線設計用のツールは、このソフトウェアが提供する数多くのツールのほんの一部にすぎません。
Dassault CATIA
ご要望に応じて、開発企業が価格を通知
Windows、及び特定のUNIXシステム
- 豊富な機能
- 複数のファイル形式を簡単に取扱い可能
- 機能性重視のライセンスは、機能一式を必要とせず、出費を抑えたい方向け
- クラウド技術により柔軟性と拡張性を備え、共同作業を促進
- 高価
- 他社のシステムに慣れた方には、独特のUIは使用しづらい可能性
- 不十分なカスタマーサービスに不満の声も
画像提供:3DS_CATIA/YouTube
機械技師向けCADソフトウェアに関して言えば、Dassault Systèmes社製のCATIAも産業界で人気です。公式ウェブサイトでは、このソフトウェアは『世界を牽引するプロダクトデザイン及び体験用ソリューション』と呼ばれており、その主張を裏付けるような多くの機能を搭載しています。通常のCADモデリングソフトウェアに期待できる機能に加え、パーツや組み立て部品の微調整を行い、自動車工業では必須となる軽量級のオブジェクトを作成するための最適化機能も使用可能です。パーツの最軽量化、剛性の改良、素材使用料の低減、そして、その結果としての低コスト化を実現するツールを装備しています。
リバースエンジニアリングやインダストリアルデザインに主に興味のある方には、Dassault社が『コンピュータ支援設計から認識拡張設計(Cognitive Augmented Design)への移行』と説明しているものにより、特に喜んでいただけるはずです。CATIAは与えられた設計スペースを基にデザインを提案し、圧延、鋳造、鍛造や3Dプリンティングなどの製造工程に沿って最適化していく性能を持ち合わせています。設計スペースの境界や、起こり得る荷重や力、素材などの設計仕様を入力するだけで、このソフトウェアは、後にソフトウェア内での微調整、認証、他のチームとの共同作業に利用可能な、トポロジー最適化された製品構想を生成します。
Fusion 360
年額495ドル
Mac及びPC
- 比較的低価格
- 共同作業も可能
- 使い易さ
- より複雑な種類のパラメトリックモデリング用ツールの装備が不十分
Fusion 360は、Autodesk社による評価の高いCADソフトウェアです。クラウドベースのプログラムであり、作業チーム内やチーム間での共同作業に最適で、プロジェクトのバージョン管理用の手段も提供し、ソリッド、メッシュ、パラメトリックモデリング用の機能も搭載しています。CADモデルの作成、機械製図への詳細情報の追加や3Dアニメーションやレンダリングも可能です。Fusion 360 は二次元ドローイング用のツールも備え、コンピューター支援製造システムをご使用の場合は、旋削や圧延もサポートしています。
3DスキャンデータをCADデータへ変換する方法
3Dスキャニングの使用には独自の利点があり、あらゆるワークフローに効率性、多用途性を追加し、品質を向上させます。この効率性によりもたらされるのは、素早いデータキャプチャ、危険であったり、手や目の届かない場所での便宜性、非接触でのデータキャプチャ、高レベルのディテールの取得、ヒューマンエラーや計測の見落としの発生の抑制、そして、コストと時間の削減です。
プロフェッショナル用3Dスキャナは、驚くような精度、高解像度での3Dモデルの作成が可能ですが、エンジニアがそのスキャンデータをすぐに利用できない場合もあります。分解したり、分析したり、加工できるようにモデルを準備することが、次のステップとなります。3Dスキャナが出力するポイントクラウドやメッシュデータの問題点は、モデルがモノリシックなブロック状であることで、これに対し、エンジニアが必要とするのは、数式や媒介変数で定義されるパラメトリックモデルなのです。
スキャンからCADへの変換ソフトウェアは、簡単に加工可能なCADモデルを作成する際に、3Dスキャンデータを参照として使用します。この方が、CAD設計を何もない状態から行うよりも遥かに効率的であり、より精度を向上させることも可能です。精度の非常に高い3Dスキャンメッシュからは、寸法や断面のような幾何学的情報を得ることが可能です。CADモデリングのために3Dスキャンデータを参照することは、その工程をより効果的に、正確に行うことに繋がるのです。現在、スキャンからCADへの変換ソリューションが数種販売されており、ここでは、その中から選択肢の上位となるものを少しご紹介します。
Artec Studio
- 年間サブスクリプション:
- 無料アップデート特典付き永久ライセンス:
Windows、及びBootCamp 経由のmacOS
- 3Dメッシュの検査、編集用の優れたツール一式が付属
- 新しいバージョンの発売ごとに拡張されるCAD機能性
- 円滑なスキャンからCADへの変換ワークフロー、主要なCADソフトウェアとの互換性
- 何もない状態からのモデル作成は不可能
- 高度なリバースエンジニアリング工程には、Geomagicの製品を選択する方が賢明
改良、新機能、新しいテクノロジーにより毎年アップデートされる、3Dスキャニング及び3Dデータ処理プラットフォームであるArtec Studioは、皆様のエンジニアリング工程を簡素化し、強化します。このソフトウェアは、更なる高品質のメッシュ作成用のデータキャプチャ拡張を行うAIニューラルエンジンである、パワフルなスキャンからメッシュへの変換ワークフロー自動化を搭載しており、非常に大規模なデータセットも、最大五億ポリゴンまで取扱い可能です。その上、Artec Studioはパワフルなフォトグラメトリの機能も搭載しています。計測関連の用途での使用や、大規模なオブジェクトや場面の3Dスキャンにおける参照データとしての使用が可能となるポイントクラウドを、インポートした画像を利用して生成することができます。
中でも注目すべきは、Artec Studioは機械技師向けに、スキャンからCADへの変換工程をできる限り円滑に行うことができるよう開発されている点です。リバースエンジニアリングや検査、若しくはアニメーションやCGIでの使用のために、スキャンデータを簡単にCADモデルへ変換することも可能です。CAD幾何形状を3Dモデルにフィットさせるのも、面倒な作業ではありません。このソフトウェアは、ほとんどのワークフローに円滑に組み入れることが可能です。STEPファイルも直接SOLIDWORKSへ、複雑なメッシュもGeomagic Design XやGeomagic for SOLIDWORKSへエクスポート可能であり、皆様のアプリケーションシナリオに更なる柔軟性と多用途性をもたらします。
Geomagic Design X
Windows
- 3DスキャンデータをフィーチャベースのCADモデルへ変換するための究極のソリューション
- リバースエンジニアリング上の如何なるニーズにもほぼ対応可能
- 最高水準のソフトウェアが入手できる反面、かなり高額の投資に
Geomagic Design Xを使用すれば、3Dスキャンデータから3Dモデルの作成が可能となります。このことにより、実際にあるオブジェクトの編集可能なデジタルコピーを簡単に作ることができるようになり、リバースエンジニアリング工程は大幅に簡素化されます。Design Xは大規模のデータを迅速に処理し、ソリッド、サーフェス、メッシュの異なったフォーマットで 3Dモデルを作成することができます。Geomagic Design Xで作成されたモデルは、更なる複雑な工程を行うために、その全設計履歴と共に他のCADソフトウェアへエクスポートすることも可能です。
Geomagic for SOLIDWORKS
ご要望に応じて提示
Windows及びmacOS
- SOLIDWORKS上で直接稼働
- 自動化されたウィザード機能により、簡単に正確なスケッチ、サーフェスやフィーチャベースの編集可能なモデルの作成が可能
- NURBSや自由形状を手際良く取扱うことのできるワークフロー
- 初心者の習得はやや難しい場合も
Geomagic for SOLIDWORKSは、直接SOLIDWORKSに組み入れることが可能なことにより、SOLIDWORKS上でGeomagicの性能を利用できるよう設計されています。Geomagic for SOLIDWORKSにより、スキャンからCADへの変換ワークフローは改善され、公式ウェブサイトによると、通常のCADに比べ、構成部品のリバースエンジニアリングワークフローを最大50%高速化するなど、効率上にも大きな利点をもたらします。
いかがでしょうか。詰まるところ、皆さんに合ったソフトウェアは、必要となる理由、ワークフローでの絶対不可欠な機能や投資額によって、その選択肢が絞られてきます。以上のソフトウェアをお試しいただく中でお望みのものに出会い、より優れたソリューションを入手されることで、理想の業務態勢の構築に本稿が少しでも皆様のお役に立つことができれば幸いです。