Tucci Hot Rods社、Artec Leoの使用でビンテージのマッスルカーの改造を近代化
課題:米国の自動車改造会社Tucci Hot Rodsは、顧客の理想通りの車を実現させるため、カスタムパーツ製作に必要となる車の部品をより迅速にデジタル化する方法を模索していました。
ソリューション:Artec Leo、Artec Studio、Rhinoceros 3D
結果:Tucci Hot Rods社は、車のライトや通気口、(フロント)グリルなどの典型的な自動車部品を扱う際、それらの画像の切り抜きを使用してそれらを拡大させるのではなく、3Dスキャンによってそういった部品をデジタル化します。この方法のおかげで、同社はより効率的で加速化されたワークフローを採用することができ、それらの部品を3Dプリントする前に、その車のオーナーである顧客が思い描いたとおりに部品を修正できるようになります。
Artec 3Dを選ぶ理由 同社は、Artec Leoのスキャンを使用することで、ホットロッド車の部品をより正確にキャプチャできるので、Artec Studioでのそのスキャン結果の編集が楽になります。
Artec Leoを使用してフォード・マスタングのフロントボディをスキャンするドム・トゥッチ(Dom Tucci)氏。画像提供:Tucci Hot Rods社
ホットロッドは、自動車の歴史の中でも特別な存在です。そのルーツは、1930年代の世界恐慌時代にまで遡ります。当時、多くの若いアメリカ人は経済的に余裕はなかったものの、時間はたっぷり持て余していたので、車の改造をあれこれ試していました。
これらの車両は、単にかっこいい見た目を楽しむものではなく、レース用に改造されました。当時、派手な改造車はドライバー達の間でコレクションされたり交換されていた中、その多くはパフォーマンスの向上を特徴としていました。第二次世界大戦後には、正式なホットロッド車のレース選手権が米国とヨーロッパで開催されました。
現在でも、ホットロッド (現在ではエンジン改造車を指す言葉として老若男女に使われています) は、依然として自動車愛好家達に人気の趣味・娯楽の対象となっています。当時の車を特別な存在にしていた煌びやかさを取り戻そうと、20世紀初頭から中期の車両を改造し続けるコレクターもいます。しかし、そのプロセスは単に説明する分には簡単ですが、実際に行うとなると難しいものです。
Tucci Hot Rods社によって改造された、1936年製クラシックモデルのダッジのトラック。画像提供:Tucci Hot Rods社
現在、ほとんどのクラシックカーの部品は製造が中止されていて、そのデザインの一部はすでに記録として残っていないので、そういった車の改造を行うには多くの部品を一から手掛ける必要があります。従来の手動で行うパターニング技術を使用してこの作業を行うことも可能ですが、 Tucci Hot Rods社は、Artec Leoの助けを借りて、このプロセスをより高速に、そして正確にする方法を見つけました。
Tucci Hot Rods社で行うチューニング
過去四半世紀にわたり、Tucci Hot Rods社は米国における改造車業界で主要な勢力としての地位を確立し、ニューヨークからネバダまで、あらゆる地域に顧客を抱えています。デーブ・トゥッチ・ジュニア(Dave Tucci Jr)氏とその妻ジル(Jill)さんによって設立されたこの会社は、現在も彼ら家族の主導により運営されており、現在は彼らの息子のドミニク・トゥッチ(Dominick Tucci )氏が工業デザイナーとして勤務しています。
顧客は、各々が希望するスタイルやエンジンを中心に展開する大掛かりな改造計画を持っていますが、それらの改造を自ら行う手段は持っていないため、同社にアプローチしてくる傾向があります。Tucci Hot Rods社が今まで活躍してきたのは、まさにこういった場面でのことでした。彼らはそういった改造リクエストの初期設計から製造、そして組み立てに至るまで、車の改造愛好家達にその全行程の支援をするパートナーとして仕事をこなしてきました。
Artec Leoを手にしたトゥッチ氏が、ビンテージのシボレー・ホットロッドのフロントを3Dスキャンしている様子。画像提供:Tucci Hot Rods社
素晴らしいことに、同社は押出成形と樹脂による3Dプリンターを彼らのワークフローに統合させる方法を考案しており、これによりヘッドライトレンズやライトカバー、そして通気口などのカスタム仕様の自動車部品の作成を可能にしています。しかし、同社は最近まで、そのような改造を実現させるために必要な測定値の取得に関して、沢山の課題にも直面していました。
「例えば複雑な金属の形状があるとします。その片面のパターンともう一方の面のパターンを作成してから、それらを測定し、それらに存在する相対点を接続することで、ほぼ正確にフィットするものを作ることができます」とドミニク・トゥッチ氏は説明します。
「しかし、そのために私達は大量のボール紙を使用し、試作品のプリントも大量に行い、何がフィットするかを確認してからさらにまた変更を加えて、その後新しいものを再度プリントしたり・・という作業を行っていました。とにかく、繰り返しが多かったです。本当に素晴らしいテンプレートを作成するには、2時間かかるかもしれません。しかしもうその時点では、完璧なものではなくなっているかもしれないのです」
車のカスタマイズの近代化
Tucci Hot Rods社による車用部品をフィッティングさせるアプローチを一新する取り組みとして、トゥッチ氏は数年前から3Dスキャンの実験を開始しました。当初、彼はXbox Kinectのカメラと安価なスキャン用ソフトウェアを取り扱っていましたが、それは「本当に初歩的な表面しか拾うことができなかった」ものの、そのおかげでより高価な製品を手に入れることができれば「大体どのように機能するものか予測できるようになった」と彼は言います。
2021年のとある展示会でArtec 3Dスキャナを体験していたトゥッチ氏は、ArtecのアンバサダーであるDigitize Designs社に連絡をとりました。彼らは、Tucci Hot Rods社のニーズを満たしてくれる適切なデバイスとソフトウェアの選択を支援しました。彼はコードが付属のスキャナも検討しましたが、デザイナーでもある彼は、完全にコードレスのArtec Leoが持つ万能な性質と内蔵ディスプレイが、彼と彼の会社にとって決断の決め手になったと言います。
「以前、PCに接続するタイプのスキャナを使用したことがありますが、その際は常にPCのモニターを見ながら何がキャプチャされているのか、そしてきちんと対象を捉えているかを確認しなければなりませんでした」とトゥッチ氏は続けます。「Artec Leoなら、ずっとその画面を見ていればいいわけですからね。さらに、持ち運びやすいおかげで、今まで何度も助けられました」
Artec 3Dスキャンの採用により、Tucci Hot Rods社はリードタイムを短縮することもできました。以前ならば、改造がどれだけ複雑かにもよりますが、顧客の車用部品のテンプレートを作成するのに最大2時間ほど、そしてその後プロトタイプを3Dプリントするのに最大20時間ほどかかっていました。Artec Leoの0.1mmのポイント精度と、1秒あたり最大3,500万点のデータキャプチャ速度のおかげで、トゥッチ氏と彼の同僚は確実にフィットする部品をたった数分でモデル化できるようになりました。
「3~4日かかっていた作業のプロセスが、わずか15分のスキャンに置き換えられました」
3Dスキャンの支援をうけた彼の最初のプロジェクトのうちの1つである、彼が設計したクラシック型ダッジに装備するカスタム仕様のテールランプを取り扱う作業でも、コストとリードタイムの節約は明らかだったとトゥッチ氏は言います。
「当初は、テンプレートの作成、テスト部品のプリント、そしてそれらの変更を行ってからまた別のプリントを繰り返す作業に3~4 日は費やしていました。プリントには最低8~9時間かかりましたが、それらは安価な素材で作られていて、それは最終的に実際に使用する部品用の素材とは異なるものでした」とトゥッチ氏は言います。「結局のところ、3~4日かかっていた作業のプロセスが、わずか15分のスキャンに置き換えられました」
Tucci Hot Rods社は、Leoの内蔵ディスプレイが特に便利な機能であると実感しています。画像提供:Tucci Hot Rods社
「Tucci Hot Rods社とのコラボレーションは、私達の以前のお客様でArtec製品にご満足いただいた方からのご紹介を通して、今回このような形で高度な3Dスキャンを伴う専門的技術を提供させていただくことができました」とDigitize Designs社のカイル・バーダイン(Kyle Burdine)氏は付け加えます。「はじめに彼らのプロジェクトの内容を確認させていただいた結果、ドム氏が実施しようとしている作業にはArtec 3Dが最適であると彼らに推奨しました。自動車改造産業におけるこの高い投資対効果と継続的なイノベーションの関係がもたらす利益は明白です」
Artec Studioは、この会社における生産性の向上にも貢献しています。トゥッチ氏は当初、「スキャンで詳細を大量にキャプチャしても、あまりに大量すぎて(人気のあるCAD設計ソフトウェアの)Rhino 3Dでそのスキャンを動かせなかったら困る」と心配していたと言います。
しかし、Digitize Designs社の指導により、彼はArtec Studioのメッシュ単純化機能の使用法を学びました。 この機能は、モデルの複雑性を軽減させ、彼が懸念していた問題を完全に回避することができるのです。Artec Studioのプログラムを使用し、小さなポリゴンを削除したり、偏差の最大レベルを設定したり、ポリゴン数まで設定できることで、結果を最適化し、他のプラットフォームにエクスポートする際にモデルを管理しやすくなりました。
「Artec Studioで、メッシュ内のポリゴン数を減らすためのツールをいろいろ試しはじめました。Rhinoでそれと同じことを実行しようとすると、毎回クラッシュしていたんです」とトゥッチ氏は付け加えました。「ですからArtec Studioでそれを実行してからRhinoに取り込んだほうがよいということに気がついたんです」
「このスキャナを入手する前にトレーニングセッションをいくつか行い、Artec Studioの使用方法と特定の目的のためにスキャンデータを処理する方法について学んでいました。それらから学んだことは私達の仕事にとても役立っています」
自動車の3Dスキャンとそれ以外の用途
Artec 3Dスキャンを導入して以来、Tucci Hot Rods社はあらゆる種類の自動車部品をデジタル化し、改造や組み立てに備えています。最初にスキャンされたものの1つは、クラシックな1936年モデルのダッジ・トラックのグリルでした。
トゥッチ氏によると、このコンポーネントの複雑な凸状の外形により、従来の方法でモデリングするのが特に難しく、最初のプリントは前後で4分の1インチのずれが生じていました。車のその部分は「誤差がほとんど許されない」ケースであった上、彼はそれが「完全に正確にフィットすることが非常に重要だった」と述べていることから、やはりこのプロジェクトには3Dスキャンが必要だったようです。
結局、同社はスキャンデータをベースとして、その車のグリルの周囲にぴったりとフィットする、ヘッドライトカバーを3Dプリントすることができました。この成功を受けて、トゥッチ氏と彼の同僚は、1970年製のマスタングのマッスルカーや、1931年製のモデルAセダンなどの、ビンテージ型フォードのカスタマイズを続けました。
ビンテージのモデルAに取り付けられたTucci Hot Rods社のカスタム仕様のモーターマウントの製造。画像提供: Tucci Hot Rods社
「モデルAをカスタマイズするには、以前はフレームレールにモーターを取り付け、すべてをボール紙でパターン化していました」とトゥッチ氏は説明します。「3Dスキャンを使用したことで、モーターとフレームを所定の位置でキャプチャすることができました。その後モーターマウントの線を描き、レーザーでそれを切りとったら、すべてがすぐにぴったりとフィットしました」
「人件費として私達は1時間あたりUS$95~100を請求しますし、各車のカスタマイズに12~18ヶ月かかることも考慮すると、たとえわずかな時間の節約であっても、それは非常に有益です」
Tucci Hot Rods社のポートフォリオは多様化し続けており、最近では、とあるクライアントが最新の2022年型フォード・マーベリックのデジタル化の依頼をしてきたり、また別のクライアントはクリーンルームのキャプチャを希望しているとのことです。
後者のクライアントのシリコンウェーハチップ工場にある複数のフロアには、機械やポンプの多層配管を収容するためのコンクリート鋳造の穴が開けられています。別のフロアに水がこぼれるのを防ぐために、ちょっとした縁石を設置する必要があったそうです。
Tucci Hot Rods社は現在、Artec Leoを自動車以外の用途に導入することを検討しています。画像提供:Tucci Hot Rods社
「私たちはそれぞれのパイプの周りを囲み、相互に固定するプレートを開発しましたが、それでもそのプレート上にある異なるサイズやチューブ、位置の20個の穴をスキャンしなければなりませんでした」とトゥッチ氏は語ります。「Artec Leoを導入することで、私達はそれらの穴すべてをキャプチャし、ラベルを付け、ひとつのモデルに仕上げることができました」
「それらの穴には、そのひとつひとつのために特別に作らなければならない独自のプレートがありました。3Dスキャナがなかったら、このプロジェクトは不可能に近かったでしょうね」
今後は、またホットロッド関連の業界か、それとも他の業界に向けることになるかはまだ不明ですが、彼の会社はArtec Leoが彼らのビジネスにとって不可欠なものになるだろうと、トゥッチ氏は述べています。「もし何かを業者にスキャンして欲しいという方がいれば、私達に是非そのサービスを提供させていただきたいです」と彼は結論付けました。
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