Thomas More研究施設が斬新なAIとArtec社による3Dスキャニングを利用して義肢装具の個別製作を自動化
課題:医療分野の専門家に向けた、義肢装具を患者に合わせた形で個別製作するための、3Dスキャニングを利用したより速く、合理化された新たな方法の開発。
ソリューション:Artec Eva、Artec Leo、Artec Studio、及びRhinoceros 3D
結果:石膏による鋳造時に臨床医が通常行う微調整を可能とする新たなアルゴリズムが軸となる、医療器具の個別製作ワークフローの改良版。
なぜ、Artec 3D社なのか:Thomas More Mobilab & Careの研究員班は軽量で利用しやすいArtec Eva、及びその後に多用途性のあるワイヤレスのArtec Leoを使用して、患者のための義肢用ソケットを敏速に設計できるよう、AIを訓練した。
Thomas More研究員により、脚をArtec Leoで3Dスキャンされる患者
生まれつき肢体が不自由であっても、病気や人生を一変するような事故の犠牲者であっても、手足を失った人々は大抵の人々が被ることの無いような障害に日々苛まれている。そのような支障は、物を持ち上げたり、運んだりという日常的な作業を行う際に生じるだけでなく、社会不安や幻肢痛に苦しむ患者の間では、精神的な形でも起こり得る。
現在、そのような肢体切断患者が義肢を利用しようとした場合には、従来からの石膏鋳造方法により、義肢はソケットへ合わせるように製作される傾向にある。この過程は肢体の一部の手作業による採寸を含むが非常に時間が掛かるため、作業の開始から程なく、患者は不快な思いをすることになる。多くの場合、完成された鋳型も保管されることがないため、後日でも利用価値のある寸法情報は失われ、医療施設は高価な石膏素材を破棄することも多い。
幸運にも、Thomas More Mobilab & Care研究施設に所属しているような研究員は、臨床医にとって義肢の個別製作を侵襲性がより低く、より簡単なものとするための新しい方法を模索し続けている。Artec社による3Dスキャニングを役立てることにより、研究員にとって突破口が開けるときも近くなっているようだ。
義肢の設計工程のデジタル化
ベルギーの都市、ヘール(Geel)の拠点にて活動を行っているMobilab & Care研究施設班は、介護や支援を必要とする人々の生活の質を向上させることに専心している。過去十六年の間、施設の研究においては整形外科医と患者が意見を交換しながら、患者の身体により合った人工装具を個別製作するための新たな手法を調査してきた。
研究員らが試みた多くの方法の一つが、3Dスキャニングや3Dプリンティングなどの先進技術を活用したものである。研究員班によると、人工装具やソケット、義肢を患者のために個別製作する工程をデジタル化することで、そういった器具をより広範な創造的自由の下で、従来よりも大幅な速さで設計できるそうである。
Mobilab & Careの研究員は名目上はトマス・モア応用科学大学(Thomas More University of Applied Sciences)の研究グループではあるが、多くの義肢装具製造企業や病院、学術機関と提携し、自身の構想を試す機会に恵まれている。これまでのところ、そういったプロジェクトは医療、学術双方の現場で、手、腕やその他の切断肢体向けの個別製作される義肢装具の開発のために、研究者たちが医師や患者と協力する形で行われた。
前述以外のプロジェクトにおいてArtec Leoを使用する、Thomas More Mobilab & Care研究施設の研究員
この一連の取り組みの中で、Mobilab & Care研究施設の研究員、かつビジネス開発者であるTom Saeyは、市場において『ずれ』があることに気付いたと話す。それは、臨床医が最も多く採用する3Dスキャナと、医師自身の実際のニーズの間の隔たりである。
「我々が気付いたのは、義肢装具産業内では3Dスキャナが使用され始めてからしばらく経っているものの、それは3D印刷のためではなく、凸型モデルをミーリング加工するために利用されている、という点である。ただ、以前使用されていたスキャナのほとんどは、そういった加工システムや付属ソフトウェアの供給業者により販売されていたものであった。そのようなスキャナも試してみたが、その限界に程なくして行き当たることになった」と、Saeyは話す。
調査結果を踏まえ、Saeyは研究仲間と共により性能の高い機器を探し始めた。手始めとして、Artec Evaにより肢体のスキャニングを上手く完了することができたが、Saeyは、Artec社のアンバサダーである4C Creative CAD CAM Consultants社にAI駆動型のArtec Leoを紹介された日から、その内蔵されたディスプレイこそが一連の作業を更なるレベルへと高める手助けになると明確に感じていた、と語った。
「ケーブルの必要なスキャナを学生と共に使用した際に気付いたのは、スキャンの最中にコンピューター画面を確認することがスキャン作業を困難としていた点である。これは多くの人々にとって、非常に不便なことである。その上、患者をスキャンする場合には患者の周りを動き回る必要があるが、ケーブル類が無い方が常に動きやすい。この二つの点が、Leoを採用した主な理由だ」と、Saeyは話す。
研究員たちは、Artec Leo内蔵のディスプレイが購入の決め手の一つとなった、と話す。
4C Creative CAD CAM Consultants社の取締役であるEdwin Rappardも、3Dスキャニングの非接触性を考慮すれば、厄介な鋳造からデジタル計測へ乗り換えることは理想的であると考えている。
「正確な計測のためにスキャナを利用することの非常に大きな利点は、患者に触れる必要が無いことである。この点により、スキャナは更に便利なものであると言える。Artec EvaとLeoを利用すれば、有益な寸法情報は電子媒体により保存されるため、石膏がゴミとして破棄されても失われることは無い。石膏による計測と比較すれば、以上の点は大きな強みである」と、Rappardは語る。
AIによるスキャニングの自動化
Artec Leoの導入後、Mobilab & Careの研究員班は早速、ベルギーの企業であるOrthobroker社との研究事業の一部として、機器を下肢用装具の設計用予測モデルの開発用に配備し、有益に利用することにした。Saeyによれば、このような装具は「CADソフトウェアを多用し」た上、手作業で修正を行う必要のある工程を経て、毎回、「一から設計」されなければならないという。
しかし、多くの患者に対して行われるこのような変更工程の大部分は似かよっているため、研究員らのAIアルゴリズムはこの工程を予測した上で、自動化することが可能であると言われている。
それでは、ソフトウェアはこの方法をどのように学習したのだろうか。ここが、Artec社による3Dスキャニングの出番である。
研究員班は施設の所有するスキャナであるEvaとLeo双方を使用し、数多くの肢体切断患者の身体を正確にキャプチャすることができ、その成果品である3Dメッシュを、自由形状モデリングツールで最もよく知られているCADソフトウェアのRhino 3Dへとエクスポートした。モデルの主要なフィーチャはインポートが完了すると解凍され、義肢装具の個別製作用予測モデルを訓練するために使用された。
アルゴリズムはOrthobroker社で現在も研究開発中ではあるが、完成した暁には、装具用ソケットの設計を加速化するために利用可能なプラットフォームへ統合されるということである。
将来的には、その速さ、正確さ、そして使い易さが3Dスキャニングの採用を推進する、と研究員班は確信している
「臨床医は日常的に、鋳型を使用する前に修正を加えた上で最終的な義肢を製作している。しかし、多くの患者に対してのそのような修正の九十五パーセントは同様の工程を辿るのである。我々は、患者の切断肢体の基部のスキャンデータとその他の数種の要因を基に、その修正内容を予測し始めた。このことにより、従来必要であったコンピューターの前に座っての何時間もの作業を行わなくても、医師は患者それぞれに特化した変更を自身で行うことができる」と、Saeyは語る。
医学における3Dスキャニングの将来
Orthobroker社がこのAI駆動式予測モデルの微調整に引き続き努める中、Mobilab & Careの研究員班は世界中の肢体切断患者の生活を向上させるための更なる方法を発見するための『捜索』を再開した。3Dスキャニングに関しては、Saeyはテクノロジーが重要な役割を果たすと断言するが、作業を素早く、正確に行うことができ、かつ取り扱いも簡単な機器でなければ幅広く利用されるようにはならない、とも語る。
Saey は自身の経験の中で、Artec社の3Dスキャニングが該当分野それぞれにおいての検討項目すべてに当てはまることを確認している。Artec Studio上でスキャンデータを処理する際には、Saeyは「特定のフレームに好きなだけ」踏み込んで作業ができたり、この作業段階をソフトウェアのオートパイロットにより自動化できたりする点が特に気に入っていると言う。この機能は、大人数の患者をスキャンする必要のある医師にとっては理想的なものとなる。
この先、進んでいくに当たり、Artec Leoは医師の現在利用している機器では不可能な速さ、及び正確さで患者の身体を計測することができるため、義肢装具の個別製作ツールとして強力な資質を持っている、とSaeyは確信している。
「この部門では、多くの企業が安価の代替品に注目しているように見受けられるが、そのような機器にLeoと同じような高品質のスキャンデータを期待することは不可能であるため、その不都合な点について企業は知っておくべきである。質の悪いスキャンデータを基に義肢装具を3D印刷すれば、完成品の質も同様に悪いものとなるので、精度を必要とする場合にはそれ相応のスキャナを使用することが重要である。この点を検討することが、大切な第一歩となる」と、Saeyは続ける。
「医療の分野では間違いなく、3Dスキャニングの適用できる状況は更に多く存在する。ほとんどすべての場合において、義肢装具の個別製作は3Dスキャニングの恩恵を受ける、と私は考えている」
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