スキャンの困難な歴史的財産を写真のようにリアルなビデオゲーム用のモデルにする方法とは
課題:光を反射する鎧の衣装の最も細かい部分も3Dスキャニングでキャプチャした上で、俳優の微妙な動きを基にした、生きているようなキャラクターのモデルを作成すること。
ソリューション:Artec Leo、Artec Studio、Maya、Substance 3D Painter、Zbrush、及びMarmoset Toolbag
結果:CGIで使用可能なレベルの高解像度でキャプチャされた、モンテネグロの中世の鎧一式の忠実な仮想コピー。
なぜ、Artec 3D社なのか: Artec社のHDモード、及びLeoのワイヤレス機能により、スキャンが困難となる光沢のあるサーフェスのキャプチャも、定評のあるフォトグラメトリの手法よりも更に高速に、更に簡単に行うことができる。Artec Studioの業界をリードする編集ツール並びに位置合わせアルゴリズムを活用すれば、データ上の穴埋めを行うことも解像度を最大限に向上させることも可能となり、望み得る最高品質のテクスチャが実現する。
Artec Leoにより3Dスキャンされる中世の騎士の鎧を身に付けた俳優
現実の人間やオブジェクト、環境空間からテレビ、映画やビデオゲーム用の本物のようなモデルを作成するには、今もフォトグラメトリの手法が業界では標準的に利用されている。
カメラで一杯のブースの形で導入されることの多い、内容の重複する写真から高解像度のモデルを製作するフォトグラメトリは、現実にある物品を仮想領域内に正確に再現することができる。しかし、より速く、より多様性のある代替手段として急速に頭角を現しているのが、3Dスキャニングである。この手法では、撮影備品やキャラクターのモデルは、数秒の内に正確にデジタル化することができる。
その上、このような利点は理論上だけのものでは無く、このテクノロジーの業界内での人気は上昇している。Artec社製の3Dスキャニングはこれまで、オンラインファーストパーソン・シューティング(FPS)ゲームであるWorld War 3用の高解像度のミリタリービデオゲーム用モデルから、恐ろしいほどリアルな人気ホラーテレビシリーズ『スリーピー・ホロウ』のためのVFXまで、あらゆるものの製作に利用されてきた。
3Dスキャニングが既に示している、最先端のCGIツールとしての自身の有効性を考慮した上で多くの人々が抱く疑問は、『このテクノロジーの導入はどれくらい簡単なのか』、そして、『スキャンデータからどのように視覚効果を製作するのか』という点だ。幸いにも、Artec社にはその工程を段階ごとに解説し、完成品を最高のものとする術を説明できるエキスパートのMikhail Shumikhinが所属している。
『正義の味方』のデジタル化
ダークソウルであれ、ドラゴンエイジであれ、その他のふんだんにある大作であれ、ゲームの世界の何処を見渡しても騎士の鎧は普通に見掛けられるようになり、開発者がこの先も手放そうとしないであろうコスチュームの流行となっている。
Shumikhinはこの理由で、3Dスキャニングの実演のために鎧を選んだ。Medieval Kotor living history museum(中世コトル野外博物館)では、保存管理者や俳優がモンテネグロの歴史の当時の様子を復元し、時代物のコスチュームを着用してパフォーマンスを行うことにより、その歴史を現実に蘇らせているが、この博物館から鎧を借りることで、Shumikhinは業界に関連する使用事例を通して、3Dスキャニングが最も難しいサーフェスのデータさえも取得可能とする様子を自ら公にしたかったのである。
従来の高解像度のカメラを利用したフォトグラメトリを行う際に必要となる写真一式の撮影により、時間をかけた形でデジタル化される『騎士』
キャプチャするコスチュームを見極め、キャラクターモデルとして演じてもらうよう仕事仲間の一人を説得した後、ShumikhinはArtec Leoを利用して3Dスキャンを開始した。毎秒三千五百万ポイントのスキャン速度を持つLeoは、数秒の内にオブジェクト全体や人々の全身をデジタル化することができる。機器のワイヤレス性に加え、この点によってデジタル化は迅速で簡潔な工程となった。
このような俳優のデジタル化の際での微細な動きに対処するため、Shumikhinはスキャンデータを分割するよう勧める。自身の鎧のプロジェクトでは、「品質に更なる制御」を行うことができ、かすかな動きにより生じる不自然な箇所の発生を回避することができた、と話す。
AIにより駆動するHDモードはLeo、並びに、より経済的で長年をかけて自身の有効性を立証しているArtec Evaのユーザーが利用できる機能であるが、こちらも解像度を最大限に向上させ、光沢によるデータ損失を最小とすることに役立った。
「HD再構築機能は、非常に便利なツールである」と、Shumikhinは説明する。「この機能により、収集するデータ量を二倍、四倍、時には八倍にも増加させることができる。Leoであればスキャニングを一時停止し、オブジェクトの反対側へ移動してから再開することも可能である」
「当社の3Dスキャナの最大の利点は、その可動性とテクスチャ及びジオメトリのキャプチャの質である。オブジェクトの高解像度でのキャプチャのために、スキャナを世界中どこへでも簡単に持ち運ぶことができる」
Artec Studioでのメッシュの仕上げ
エクスポートするためにスキャンデータを仕上げて準備する工程では、Shumikhinの注いだ労力はArtec Studio搭載の高度な機能を有するツールにより後押しされた。Shumikhinは特に、スキャンキャプチャ、及びデータ処理ソフトウェアのグローバル位置合わせアルゴリズムの簡便さにより、エラーの修正やキャプチャされたフレームからの最高品質のメッシュの作成を操作し易く、迅速な形で行うことができるようになっている、と話す。
Shumikhinの3Dモデルにキャプチャされた鎧の光沢のあるサーフェスの一部
スキャンデータのメッシュ化過程における解像度の最適化に関しては、Shumikhinには自身のワークフローを利用したいとお考えの人々へ対して一番に伝えたいアドバイスがある。完成品を最高のものとするためには、メッシュ化の解像度をEva及びLeoが可能とする最小0.1mmに設定する必要は無く、Shumikhinは0.5 mmとすることを提案している。
同様に、Artec Studioの穴埋めツールは反射光が完全なデータキャプチャの妨げとなったことで生じた、どんなメッシュのギャップにも非常に効果的であり、自身のプロジェクトでは解像度の質をさらに向上させることのできるフォトテクスチャ処理機能も利用しなかった、とShumikhinは付け加える。
「Artec Studioには、フォトテクスチャ処理及び位置合わせにとても役立つアルゴリズムがある」と、Shumikhinは話す。「このアルゴリズムにより、非常に詳細なモデルの完成も実現する。今回のプロジェクトでは、Leo により非常に高品質のテクスチャをキャプチャすることができたために利用する必要はなかったが、フォトテクスチャ処理用アルゴリズムは多くの人々にとって非常に便利であると考えている」
メッシュからモデルへ
メッシュの仕上げを行った後、Shumikhinはそれをサードパーティプログラムへ送信し、ベイク処理やレンダリング、そしてCGIモデリングにおけるもう一つの一般的な課題である『対称性』に取り組んだ。Shumikhinはこの解決をビデオゲームでモデルを利用可能状態にするための『基本的ルール』と呼んでいる。
俳優を完全に対称となるよう立たせることは不可能に近いため、メッシュは編集用ソフトウェアを用いてデジタル的に均等にする必要がある、とShumikhinは語る。この実現には、メッシュの左右両側を互いに反映させ、メッシュを更に対称となるように調整するための『ガイド』として利用できる、ZbrushのようなプラットフォームにエクスポートすることをShumikhinは推奨している。
その上で、Shumikhinは自身のモデルをMayaへエクスポートし、ポリゴン数の少ないジオメトリを生成し、ソフトウェアのUVレイアウトツールを活用してテクスチャマッピングを行った上でMarmoset Toolbag並びにSubstance 3D Painterへと送信した。
アニメーション製作での利用の準備のためにレンダリング中の、モンテネグロの騎士の鎧のモデル
Shumikhinは後に Toolbagを利用して自身のモデルをレンダリングし、ライティングを完璧なものとした上でテクスチャをベイク処理した。しかし、標準的なテクスチャマッピングベイク処理用の設定はモデルのほとんどに対し十分であるのに対し、Shumikhinはファイルサイズを低減させるために事前に4Kへ減少させるよう勧めている。『様式化』のためにSubstanceでテクスチャのクリーニングを行った後、ShumikhinはモデルをMayaへ返送し、ソフトウェアのOrnatrixプラグインにより自身のキャラクターにリアルな髪を追加した。
テクスチャ処理の完了後は、Mayaの自動スケルトン生成、及び『スキニング』ツールを使用してモデルをアニメーションやボーンアニメーション用に利用できる状態にすれば完成となる状態となった。Shumikhinは「Mayaを利用している人々のコミュニティは非常に大きい」ため、ボーンアニメーションや工程のその他の過程に関する「一般的な質問に対する回答の入手や助言を得る」には最適である、と付け加える。
3Dスキャニング:CGIの未来は
俳優と中世の鎧一式から、完全にアニメーション化されたコスチュームを纏ったキャラクターを無事作成完了したShumikhinは、自身の3Dスキャニング工程はCGI産業内だけでなく、他の分野でも活用できると考えている。
Shumikhinの(事前に設計された剣と盾のモデルも含めた)騎士の鎧のモデルの完成版
スキャニングのエキスパートではあるが、Shumikhinはビデオゲームモデリングに関しては自身の役割には「大掛かりな一連の技術などは必要ない」と話す。 その代わり、自身の「内なる開発への熱意と願望」が自分に「3D分野における大いなる発見や粘り強い取り組み」へ携わるよう求めている、と主張する。
そのため、Shumikhinは現在、他の意欲的な3Dアーティストに自身の例に倣い、「適用できる知識や新たな技法」を探求しながら、スキャニングを活用して自分の作品を製作するよう促している。
「今の世界で我々が見ているあらゆるものは、3Dモデルで再生できる。3Dスキャンはこの形で世界を、すなわち現実と仮想の世界を繋ぐ橋の役割を担っている。ゲームスタジオや映画製作会社、仮想現実産業が高品質の仮想現実コンテンツを必要としている中、Artec社の3Dスキャニング技術とArtec Studioがその実現を可能とする」と、Shumikhinは締めくくる。
「3Dスキャニングは、いとも簡単に自らの適所を既に見つけているようだ。それは、高度にリアルな撮影備品、空間、鎧、車両、キャラクターや俳優の作成分野だ」
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