埋蔵品がArtec 3D社によるスキャニングにより Time Teamのテレビ番組やビデオゲームのプロップに
課題:Shadow Tor Studio、及びプリマス大学(University of Plymouth)はテレビシリーズや近々発売されるビデオゲームのために、珍しい発掘品や年代物の衣服、Time Teamの参加メンバーのデジタル化を担当した。
ソリューション:Artec Leo、Artec Ray、Artec Space Spider、Artec Studio、及びAgisoft Metashape
結果:Time Teamのアバターの作成においてフォトグラメトリ用キットの代わりにArtec Leoを使用することにより、その何ヶ月も擁する工程はわずか数日で完了するものとなった。 Artec 3D社によるスキャニングにより、珍しい発掘品や歴史遺産地も未来の世代のために保存し、将来的に仮想現実(VR)で利用できるよう、驚くような精度でデジタル化できるようになった。
なぜ、Artec 3Dなのか:一体型でワイヤレスのArtec Leoは直感で使用できる内蔵ディスプレイを備え、遠隔地でのアバターのデジタル化のために望み得る最適なツールとなった。フォトグラメトリ用ブースの使用時よりも作業が高速で干渉度の低いLeoは、歴史的なレベルでの時間短縮を実現した。
考古学の世界では、Time Teamの参加メンバーはおそらく最も有名人に近い存在だろう。一九九〇年代から二〇〇〇年代にかけて、この多くの人々に愛されているイギリスのTV番組を支えるチームは、国中の視聴者に歴史的発掘現場での発掘作業の興奮を届け、それ以来、番組は更なる五十ヶ国以上の国々で放映されている。
番組は二〇一四年にその製作を終了したが、近年、当初のキャストに新たな考古学愛好家の一団を迎えた上でYouTubeシリーズとしてイギリスで、そして更に広い地域のテレビで復活した。
デジタル世代でも内容を新鮮に保つため、Time Teamのメンバーは驚くようなテレビ番組でのCGやインタラクティブ博物館、仮想現実ビデオゲームシリーズを通して、歴史的に有名な場所の全盛期の様子を3Dで再現することを目指した。
Time Teamがデジタル時代に参入
歴史を更に魅力的なものとするという野望を実現するため、Time Teamはプリマス大学との提携により先進技術を活用した。
過去十年間、大学はArtec社ゴールド認定パートナーであるPatrick Thorn and Co社とあらゆる事業に取り組み、二〇一九年には計測業水準の精度を持つSpace Spiderを採用し、その翌年にはArtec LeoとArtec Rayを入手することによりスキャニング性能も向上させた。
歴史のあるダートムーアの農家の屋外に設置された3DスキャナのArtec Ray。画像提供:インスタグラムのプリマス大学(plymouth on Instagram)より
誇らしくArtec LeoとRayを所有するプリマス大学は現在、サウス・ウェスト・イングランドに最大のビデオゲーム製作所を設立中であり、急速にバーチャルデザインにおいての先導者になりつつある。
大学は所属する学生の雇用状況を商業上の提携によって改善する方法を模索する中で、Time Teamとの共同業務を二〇二二年に開始することを承認した。そして、Time TeamのパートナーであるShadow Tor Studiosとの共同事業の一環として、後にビデオゲーム用CGIへと発展することになる、歴史的なデボンの農家を仮想現実での観光名所へと変身させる作業にまず着手した。
プリマス大学講師のジョエル・ホッジス(Joel Hodges)とShadow Tor Studioのマット・クラーク(Matt Clark)にとって、この共同事業はちょっとした同窓会のようでもある。地元で業務を行っていたクラークに十四歳のときに初めて出会い、ホッジスは彼のこの分野での専門的技能を知っていた。そのため、この事業は自身の大学の研究目的に「完璧に合ったもの」で、自分の生徒たちに実務経験を積ませる素晴らしい機会であると感じた。
この二人の開発者はお互いの専門知識を組み合わせ、AI駆動型のLeoと長距離用LiDARスキャナのRayと共に有効活用した結果、その建物全体の本物のようなモデルも素早く作成できることに気付いた。
このダートムーアに建つ、歴史遺産建造物の最も細かい部類のディテールのキャプチャに使用されるArtec Leo。画像提供:プリマス大学のインスタグラムより
クラークは、「建物そのものの中には、一部に家畜を囲う長い納屋がある。Leoを使用すれば、そのかなり変わったフィーチャの一部もスキャンでき、スキャン自体もとても簡単であった。その上、コーンウォールの泥だらけで湿気が多い地方に立つ、この歴史的な埃まみれの建物の近くに、この鮮やかな白のテクノロジー機器が設置されているのもなかなか良いと思った。その情景は、とても格好良く見えた」と話す。
「多くの小さなフィーチャもキャプチャした。Rayは内装の担当で、Leoは扉の枠部分に加え、悪魔を追い払うと言われる風変わりな彫刻による小さな切り込みと焼け焦げた痕をキャプチャした」
Time Teamのアバターの製作
Time Teamのスペシャル番組で後に特集されるデボンのログハウスのデジタル化を無事完了し、ホッジスとクラーク、および二人の生徒は、近々発売される番組のビデオゲームやインタラクティブ・コンテンツのためにアバターを製作する任務を負った。
しかし、問題が発生した。司会者と参加メンバーは撮影のみに集まるのである。番組の大部分は遠隔地の発掘現場で撮影されるため、変わりやすい天候と物流的な非現実性から、従来ビデオゲームのアバターの製作に使用されていたフォトグラメトリ用ブースが選択肢から外れてしまった。
その上、データ処理の問題もあった。フォトグラメトリ用ブースは人物の撮影に、何百とまでは言わないものの、何十台ものカメラをあらゆる角度から使用するが、キャプチャされたデータを3D点群に同期させるには、3Dスキャニングの場合よりもかなり長い時間を要する恐れがある。
「ブースは千分の一秒で必要な写真を撮影できるので非常に便利だが、データ処理にはどのぐらい時間が掛かるのだろう?」と、Patrick Thorn and Co.の所長であるパトリック・ソーン(Patrick Thorn)は疑問を抱く。「Artec 社の最近の人体のスキャニングに関するウェブセミナーを閲覧したところ、Artec LeoとArtec Studioによる人間の身体のモデルのスキャン及びデジタル彫刻は、今では非常に速く行うことができるようだ」
「Leo内蔵のWi-Fiも、もう一つの大きな利点として挙げられる」と、ソーンは付け加える。「インターネットに繋がればすぐ、スキャンデータをArtec Cloudへアップロードでき、事務所へ戻ってからのArtec Studioでの処理に準備完了となる」
このような速さのもたらす利点はTime Teamアバタープロジェクトへと反映され、初期段階のキャプチャと処理過程も数日で完了した。デボンの業務班はプレイヤーがゲーム内で服装を変えることを可能とするため、スキャンの難しいとみなされる、鎧のような光沢のあるサーフェスを持つ歴史的衣装を着た司会者のデジタル化さえも完了することができた。
クラークによると、Leoの素早い秒速三千五百万ポイントのキャプチャ速度により、参加メンバーのスキャンも「じっと立って、二十分息を止めて」などと忠告する必要もなく、容易に行うことが可能となったそうである。
3DスキャナArtec Leoを手にする、Shadow Tor Studioのマット・クラーク
「人物やコスチュームの折り目、自然光など、特定のエピソードの映像に合わせたいと考えているものがすべてキャプチャされた」と、クラークは付け加える。「長い間じっと立っていたいような人もいないだろうし、第一、撮影スケジュール上でそれが可能となることも稀だ。一人の人物の頭部のフォトグラメトリ用の写真を六百枚も撮ることと比べると、Leoを使用する方がかなり速くなる」
「ポップアップ式のブースも用意できることは分かっているが、我々の撮影場所は道路や電源からは二時間離れていることもあるため、3Dスキャニングこそが疑う余地の無い、唯一の方法だ」
歴史的モデルの製作
ホッジスとクラークはTime TeamアバターのキャプチャにはワイヤレスでAI駆動型のLeoのみを使用していたが、プロップのデジタル化用のワークフローにはフォトグラメトリを後に導入した。
古代ローマ時代の鎧のような光沢のある衣装をスキャンする際には、製作担当は当初、その反射しやすいサーフェスがキャプチャしづらいと感じた。しかし、今ではArtec Studioがあるため、3Dスキャニングとフォトグラメトリによるデータを円滑に組み合わせることができるようになった。
3Dスキャンされた古代ローマの衣装のプレビューを閲覧するために利用される、Artec Leo内蔵のディスプレイ
この機能を使用して、製作班はカメラによる高解像度の写真を利用してモデルの欠落している部分をすべて補足し、非常に高い品質のテクスチャを得ることにより、最終的に信じがたいほど本物のようなデジタル化されたアバターを製作した。
Artec Studioにより、モデルをAgisoft Metashapeのようなフォトグラメトリ用プログラムへエクスポートすることも更に簡単となった。実際のところ、Artec社製のソフトウェアを使用することにより、製作班は衣装の折り目や歴史的なプロップの複雑な細部のような貴重なテクスチャも損なわない形でモデルのポリゴンの数を劇的に減少させ、ゲーム内へのレンダリングもより容易な形で行うことができた。
「フェイスにもハイポリを維持するが、ゲームプレイや動作用にポリゴンの数を減少させるには高速処理が必須となる」と、クラークは説明する。「その高速処理もテクスチャのディテールが最初に焼き付けられた上で、高解像度のスキャンデータ素材すべてを保持する形で実行されなければならない。その上で、ソリッドで非常に詳細なモデルを得るために、ローポリのモデル上に戻す」
プリマス大学の更なる計画
プリマス大学とShadow Tor StudioはTime Teamメンバーのデジタル化を徐々に進めていく傍ら、その共同事業の次なるステージを現在、計画中である。以前、別の発掘現場において、古代ローマのサルコファガスを発掘された時点でデジタル化することに成功していた。
このようなリアルタイムでキャプチャされた映像は程なくテレビでの没入型体験の製作に利用できるようになると考え、製作班はその場所に直ちに戻る予定である。将来的な発掘作業においては、ビデオゲーム用プロップを更に製作するためにLeoやRay、Space Spiderを使用することにしている。
しかし、ホッジスにとって、Time Teamでの共同事業のような取り組みの効果は、デジタル複製版として物品を再現できるようになったことに留まらない。ホッジスの学部は多くの先導的存在のビデオゲーム開発者との結び付きを確立し、プリマス大学でのコースへの需要の急増にもつながった。
Artec Leoでデジタル化される鎖帷子(くさりかたびら)の衣装
自身の学部の施設が発展を続ける中、ホッジスは産業界のニーズにより適合した技術を生徒に学んでもらうため、三つの新たなコースを開始する予定である。
「スタジオがエディターやゲームデザイナーとして勤務できる人材を必要としている中、テクニカルデザイナーの需要は高まっている。我々は、エンジニアリングとデザインの間の隙間を埋めることに着手し始めており、当校の新たなコースでは、生徒の方には3Dスキャニングと同時に、技術者との作業にも取り組んでいただき、あらゆることを実行に移していく」と、ホッジスは締めくくる。
「アバターのキャプチャ工程は、当校のカリキュラムへの導入を引き続き進めていく事業であるが、教員陣は更なる商業上の共同事業をも推し進めていく」
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