海にうねりを巻き起こす:Artec Rayが巨大な高速船のリバースエンジニアリングを加速させる
課題:オランダ人の高速船の製造設計者が、プロフェッショナル用の過酷な使用に耐え得るような手製の船舶の設計品を再製作しようとしている。その計測を手作業で行うには時間やコストが掛かりすぎるため、担当チームはリバースエンジニアリング用の正確な計測をするための代替案を探すことになった。
ソリューション:Artec Ray、及びArtec Studio
結果:リバースエンジニアリングに使用する3Dモデルの作成のため、三艘の大きな船舶のスキャンは素早く完了し、プロフェッショナル用のボートの製作に役立った上、正確さも保証された。
船舶を何もない状態から製作することは、気の遠くなるような作業であるとお思いなら、それは確かに間違ってはいない。三方向の寸法の正確さを保証した上で、あなたの今いる部屋の大きさほど(もしくは、それ以上)の船舶を建設することを想像してみて欲しい。建設しようとする船舶は操作しやすく、頑丈で、安全でなければならない。この上に発注元の詳細な計画や要求が追加されると、建設作業は更に困難で、時間の掛かるものとなる。しかし、それで終わりではないのだ。実際の建設作業やこういった全ての手作業の前には、更に計画、部品の試験、設計の作業を行う必要がある。手短に言えば、船舶の製作は大仕事である。
計測作業を待つ、酷使に耐えうる仕様のプロフェッショナル用船舶(写真は3D Creative社の厚意により掲載)
『完璧さを求む』? その挑戦は受けて立とう。
しかし、あるオランダの家族経営による船舶建設企業にとっては、船舶の建設はテクノロジーを前進させ、技術を洗練していき、発注先を待たせるようになった際には、先方の期待を超えたものを作る、以上の点に尽きると言う。これは正に、現代のテクノロジーが役に立つ状況である。製品が再現性のあるタイプのものであれば、リバースエンジニアリングを行うことにより、その製造過程を高速化し、単純化することができる。
船舶にリバースエンジニアリング行う場合は、非常に正確な計測を必要とする複雑なサーフェスを大量にキャプチャしていく『冒険』に出ることになる。従来の方法でこれを行うには、何週間もの時間を費やすことになり、確実に信頼のできるデータを得られるという保証もない。しかし、3Dスキャニングであれば、この過程も複雑なものではなくなり、個別生産したパーツを正確に計測することができるため、一寸の狂いも無い取り付けが可能となる。この企業はこの点を考慮し、パーツを再生産して製造工程を効率化するため、三艘の巨大な船舶の3Dスキャンを発注した。
対象となるボートは、貨物船、救助艇、軍隊用複合艇であり、いずれもプロフェッショナル用の過酷な使用、任務の遂行、安全な帰還の用途のために設計された船舶である。その品質を最高のものとするため、船舶は最新のテクノロジーを使用して計画、設計されており、この事実を考慮すれば、現在のモデルの忠実なデジタルコピーを作成するため、信頼のおける3Dサービスの提供者を探すことは当然と言える。それぞれの船舶は数トンもの重さがあるため、プロジェクトに携わるグループはスキャンを行う際、重機によって船舶を移動させたり、持ち上げたり、回転させたりしなければならず、同時に、3Dのレプリカをできる限り高品質で作成する必要もあることから、その工程全体が非常に困難な作業となる。
3Dテクノロジーの『搭乗(登場)』
リトアニアを拠点とする3D Creative社の技術者チームにとっては、非常に大きな物体の3Dスキャニングは当然、初めてのことではない。バルト諸国での3Dサービスの主要な提供企業であると共に、Artec 3D社のゴールド認定パートナーでもある同社は、このようなプロジェクトに取り掛かるために必要な熱意、専門性、そして器材をすべて持ち合わせていた。スキャニング担当チームは、船舶の製作者の今回のニーズを基に、大規模なオブジェクトのキャプチャ用に設計された長距離用のレーザー3DスキャナであるArtec Rayを採用した。
作業に向けて準備万端のArtec Ray(写真は3D Creation社の厚意により掲載)
Artec Rayが誇りを持って提供するのは、同クラスでの最高の角度精度、および、タービンやプロペラから船舶まで、非常に大きなオブジェクトをキャプチャする際の、ノイズの量が従来よりもかなり少ないスキャンデータである。このプロジェクトの最終目的は、リバースエンジニアリングに最適な品質のSTLファイルを作成することであるため、このことは極めて重要となる。Artec Rayは、そのミリ単位以下の精度に加え、どんな環境下でのどのようなワークフローにおいてもその性能をフルに発揮し、今回のような屋外の大規模のプロジェクトさえも、その進化したテクノロジーの下で無事遂行できることを証明した。三脚に取り付けたArtec Rayは、ラップトップパソコンやスマートフォン用のArtec Remoteアプリで遠距離操作が可能なため、準備の全く必要のないスキャニングが実現する。
慣れた手捌きで
3D Creative社の最高技術責任者であるŠarūnas Paulauskasは、「このプロジェクトでは、二つの最大級の課題に直面した。一つは、スキャンの工程を二日で完了することで、鋳型の重さや大きさのため、かなり難しい作業となった。二つ目の難点は、鋳型がとても滑らかで光沢があるため、サーフェスにスキャニング用の準備を施すことであった」と語る。
一般に、滑らかで光沢のある鋳型は、スキャニングの際の大変な難関となる(写真は、3D Creative社の厚意により掲載)。
技術者チームは、すべての工程を円滑に進めようと、船舶製作業者から承諾を得て、自身の企業内の敷地でスキャニングを行うことにした。船舶は重機により移動され、それに伴い、作業領域が整えられた。しかし、それでも予期しない事態は起こった。スキャン予定の十二メートルの鋳型の一つが屋外で雨に晒され、スキャニングのためにその表面に艶消しを施すパウダーを適用する前に、乾燥させることを余儀なくされたのである。
「手作りの鋳型のサーフェスは、CADデータから機械加工されるものではなく、それぞれ形状が異なっているため、パーツの組み立てにはコストも時間も非常に掛かることになる」と、Paulauskasは説明する。「通常、そのような作業では、鋳型から作成された船体の所定の位置にパーツが収まるよう、その多くに修理や調整を施す。そのため、スキャニングを導入すれば、CADソフトウェアが多くの作業をミリ単位以下の精度で、それも船体が完成する前に完了するため、人的作業が大幅に減少する」
すべての準備が完了した後にスキャニング担当チームが驚いたことは、総作業時間三十五時間のうち、スキャニングに要した時間が三、四時間のみであったことだ。チームと顧客の双方にとって喜ばしいことに、プロジェクトを完遂するための時間は、最終的に一日半まで短縮された。三艘の船舶は、〇.七ミリのポイント精度で十二時間かけてスキャンされ、その後、その後処理がArtec Studio上でスムーズに行われた。
進行中の3Dスキャニングと処理作業(写真は、3D Creative社の厚意により掲載)
高い期待に応えていく
「我々の業務は、リバースエンジニアリングのために、ノイズの極めて少ない、正確に計測されたサーフェスを取得することだった。スキャンする必要があったのは、エッジを含んだ鋳型の片側、内部のみであった」と、Paulauskasは続ける。「この作業はArtec Rayを使用して遂行したが、取得したデータは、リバースエンジニアリングで上手く利用することができた。手製の鋳型には、ミラーリング用のモデリングツールは使用できなかったため、全体をスキャンしなければならなかった。全てが対称ではなかった上、発注元の方も、設計のために、全ての詳細を元のサイズのままに得ることを望んでいた。三艘の3Dモデルは遂に完成し、エンジン部分と座席部分は、製造業者の技術者チームが後で追加した」
スキャンされた3Dモデルは、リバースエンジニアリングによりSTEPファイルを作成するために利用された。リバースエンジニアリングの専門家は、手製の船舶の形状を記録漏れの無いよう、特に慎重に作業を行う必要があった。このプロジェクトは、企業の設計品が同社の試験済みである古い鋳型を基にしていた、という点で、唯一無二のものとなった。スキャニング担当チームが強く忠告されていたのは、設計する船舶を最も過酷な環境や状況においても絶対壊れないようなものとして欲しい、ということであったため、全てのディテールが重要となった。船舶に不正確な箇所があれば、その航行性が制限されてしまうことに繋がるのである。そのため、Artec Rayを使用したのが吉と出た。
船舶の製作は、伝統的な職人技術から3Dスキャニングやリバースエンジニアリングに至るまで、それぞれの手法を最大限に生かし、大きな発展を遂げた。リトアニアのチームは、手作りの船舶の信頼性に、3Dスキャニングのみが提供できる正確と速さを組み合わせることに貢献した。どんなリバースエンジニアリングのプロジェクトを行うにも、最適なソリューションを選択し、有効に使用する必要がある。Artec社のテクノロジーの採用により、この業務も無事完了し、安全で丈夫な、新築の船舶の進水準備が完了したのである。
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