携帯式3Dスキャナが列車の脱線の防止に 貢献できる方法とは
課題:全長が何千マイルもの長さに及ぶ、老朽化した線路を定期的に点検する任務のため、鉄道検査員はその歴史上、今が一番忙しい職業である。そのような長い線路の検査方法には、一日の間に行われる目視によるものしかない。その問題点は、目立ちやすい欠陥は見つかったとしても、比較的発見しにくい、極めて小さな亀裂や金属疲労、及び寸法的、若しくは位置的な変化は見過ごされる恐れがあり、そういった欠陥や変化が、次の定期検査の前に故障の生じる程度まで発展している可能性があることだ。このため、検査員はこの問題に対処する目的で、他に類を見ない3Dスキャナへと目を向けた。
ソリューション:Artec Leo、Artec Studio、及びGeomagic Control X
結果:3DスキャナのArtec Leoを使用することにより、検査員は数分のうちに、枕木や砂利も含めた線路全体をデジタル的にキャプチャできる。スキャンデータはミリ単位以下の精度を持つカラーの3Dの形を取り、極めて小さな欠陥や不規則な点も明らかになる。その上、一定の期間内において繰り返しスキャンすることにより、線路の幅の拡大のような、より大規模な進行中の構造的変化も発見することができる。鉄道事故の記録も可能となり、取得された3Dスキャンデータを事故状況の再現や、被害の分析に使用することもできる。
なぜ、Artec 3Dなのか:鉄道検査員はスキャナのケースを開けて、起動ボタンを押してから一時間もしないうちに、線路や列車、その他のオブジェクトをミリ単位以下の精度で、それぞれ数分以内にキャプチャすることができる。電源用ケーブルもラップトップも別途に用意する必要もない。Leoなら、検査における詳細な3Dスキャニングも、従来のどの検査方法よりも簡単に、より速く行うことができる。
それは、カリフォルニアでの真夏のある日の夜遅くであった。鋭いカーブを進んでいたサザン・パシフィック鉄道の列車が脱線し、そのエンジンの一つと、タンカー列車のうちの七両が側面の架台に突っ込んだのである。
列車の一両は、サクラメント川のど真ん中に逆さまの状態で着水した上、車両より猛毒性のある水溶性の殺虫剤であるメタムナトリウムが漏れ出した。
危険物処理班が現場に到着したのはその六時間後で、更なる六時間をかけて、一万九千ガロンもの硫黄系殺虫剤すべてが、かつては澄みきっていた河川の水中に既に流出してしまい、数え切れない数千匹のサケやイワナ、その他の川藻に至るまでのすべての水中生物の命が絶たれてしまったことが確認された。
その後、数時間、数日と経過するうちに、流出した毒性のある緑色の汚染物質が遥か南方のシャスタ湖にまで流れ着き、川沿いの数百人もの地元民が皮膚や目、呼吸器系の重度の障害で病院へ担ぎ込まれた。
その影響は深刻で、即時に起こった環境破壊を別にしても、その後、数カ月、数年にも及んだ地域の観光業への被害や、報告に上らなかった損失は何百万ドルにも及んだ。
列車の脱線:世界規模の脅威
毎年、世界中で数千もの脱線事故が起きており、そのほとんどは死者や環境破壊にはつながっていないものの、物的損害、構造的被害の影響やサービスの途絶の余波は、事故の後も数十年に亘り、鉄道企業全体に及ぶこともある。
大多数の脱線は、レールの破損など、線路の欠陥により発生する。『ゲージ(幅)の不均衡性』、線路のずれ、スイッチや車輪の故障などが原因となることもある。多くの国では、政府規制により四半期ごと、若しくは月ごとの企業の所有する線路のすべての箇所の検査員による人的調査が課されている。
アメリカだけでも十六万マイル以上に及ぶ線路がある、鉄道の検査は大変な作業となる。
鉄道企業の多くは、線路の亀裂や、その他の異常や欠陥の発見のために、自動化された、超音波を使用した高速の検査用ソリューションを導入しているが、定期的に検査の必要な何千キロもの長さの線路の検査に対しては、非常に有効である。
高速の線路検査から、人的検査まで
検査において、問題となる箇所が発見されると、鉄道検査員は、更なる詳細の目視を行うため、現場へ派遣されることもある。
しかし、調査員が赴き、一回の業務で信頼のおける検査が可能な線路の長さには限りがある。それだけではなく、表面の欠陥に遭遇したとしても、欠陥自体を発見できるかどうかは、それがどれだけ目立つものであるかに拠るのである。
極めて小さな亀裂や金属疲労、寸法的、位置的な変化は見過ごされることがよくあり、次の定期検査が行われる前に、そういった欠陥や変化が故障の生じる程度まで発展している可能性がある。
その施工不良により、脱線へとつながることもある、線路締め付け用部品
それに加え、目視による検査は、それぞれの検査員がレールの構成部品や線路の特定の箇所を確認する必要性を主観的に決定しているため、記録の面から考えると、複雑化することもある。
確認をしないと決定した場合、その後の定量的計測は行われないことになり、安全性検査記録に危険につながる盲点を残すことにもなり兼ねない。
鉄道線路の破損箇所
3Dスキャニングの使用が望まれる状況
この理由のため、より多くの鉄道検査員が、コスト効率が良く、時宜を得た形で、現状の方法の不十分な面を補うため、プロフェッショナル用ハンドヘルド式3Dスキャナへと目を向け始めたのである。
しかし、その多くにとって、スキャンのみでなく、ラップトップや電源函、ケーブルを持ち運びしないといけない、という考えから、そういった機器の利点の度合いは半減してしまうように感じられるのである。
品質管理専門業者から直接手掛かりを得て、鉄道レール検査員は、自身の目視による検査機器一式へのArtec Leoの追加が理想的であることに気付き始めている。Leoは、超音波を使用した鉄道レール検査システムと同じように、非破壊試験(NDT、Nondestructive Testing)用のソリューションである。
他に類を見ない3Dスキャナ、Artec Leo
しかし、Leoは高速の超音波式レール検査システムや他の3Dスキャナとは違い、内蔵式バッテリーパックとタッチスクリーンを有し、百パーセントワイヤレスの上、携帯式であり、どんな欠陥の疑いのある線路の箇所も、ほんの数秒の内にミリ単位以下の精度でキャプチャすることができる。
鉄道レール検査専門業者からの高まる需要があることに気付き、Artec社のアンバサダーであるGoMeasure3D社は、Leoを用いて、この他社の追随を許さない3Dスキャナが、このような業務の課題を受けて立つことができるかどうかについて試すことにした。
Artec Leoでレールの一部をスキャンする、GoMeasure3D社の3Dスキャニング専門員アート・ペクン(Art Pekun)
Artec Studioソフトウェアとの相乗効果により、Leoの信頼のおける検査報告を生成する性能は、監査やコンプライアンスの観点から考えると、一層価値のあるものである。
その上、Artec Cloudとの併用により、鉄道レール検査員はレールからスイッチ、列車の車輪まで、すべてのものを次々とスキャンすることが可能で、取得したスキャンデータを処理作業や仕事仲間との共有のために、クラウドへ転送することもできる。
例えば、検査のために線路の特定の箇所をキャプチャした後も、続けて締め具や接続用部品、分岐器などもスキャンでき、また、社内のエンジニアやその他の検査官は、たった数分前にスキャンしたばかりの線路のサーフェス距離マッピング検査を行うこともできるのである。
Leoのタッチスクリーンディスプレイで線路のスキャン済箇所を確認
取得したLeoのスキャンデータは、レールやその他の部品の変形度が許容度に納まっているかを確認するために、参照用のCADモデルと比較することも可能である。
表示内容も簡単に把握できる視覚的ヒートマップは、ミリ単位以下の精度を持ち、参照との如何なる違いも一目で分かる。LeoとArtec Studio なら、ソフトウェアのスキャンからCADへの変換機能を使い、自身でCAD参照モデルを作成することも可能である。
Leoによる経時変化の監視
Leoを利用して、レールの検査員はどのような特定の線路の如何なるサーフェスジオメトリも、レールの構成部品もすべて記録することにより、航空機製造業者が飛行翼や機体の長期的な構造的性能を試すために行っている作業、すなわち、経時変化の分析を簡単に行うことができる。
数カ月の間隔をおいて、冬の寒い朝と暑い夏の日に取得された二つのスキャンデータのArtec Studio 上での比較
そのような分析は、測定値が許容値を超過しているか、あるいは許容値近くまで上昇しているかどうかを見極めるだけでなく、その原因の所在を突き止める手掛かりにもなる。
例えば、線路のゲージ(幅)が数カ月の間に許容値を越え始めた場合は、その下に敷いてある線路用砂利の厚みや、排水の不十分さがおそらく原因だと考えられる。
線路の部分ごとの差異を表示する、Artec Studio のサーフェス距離マッピング
スキャン作業から検査を行う過程において、更なる高いレベルの性能や多様性を求めるユーザー向けには、業界を牽引するソリューションであるGeomagic Control XをArtec Studio とシームレスに一体化させることも可能である。
このことにより、ワンクリックするだけで、一つから数十までの数のスキャンデータの統括的な検査報告をバックグラウンドで生成することができ、仕事仲間や経営陣、保証会社などと即時に共有することも可能となる。
平面度、サーフェスの状態、CAD上の傾斜度、平行度などの幾何公差設計法(GD&T)計測を可能とする、Leoによる実際のスキャンデータとCAD参照モデルとの比較
災害勃発時:Leoが鉄道事故の再現に如何に役立つか
路線上での脱線やその他の鉄道事故など、予期しない事態の発生において、鉄道専門業者や調査員はLeoに助けを求めることができる。事故現場での線路の破損したすべての箇所や、潰れた砂利も数分の内にキャプチャすることができる。
その上、破壊された列車などのオブジェクトのLeoによるスキャンの際に完成された3Dモデルは、鉄道事故再現担当員や捜査員が、脱線の生じた、あるいは衝撃を受けたすべての箇所、及び衝突により変形した箇所の記録や分析を行うために使用でき、そのすべての物証は、事故当初から発生までのすべての段階の再現に必要な、貴重な詳細情報を提供することになる。
線路、砂利、台車に甚大な被害が生じたタイでの列車脱線事故
Leoとその他の3Dスキャナとの併用
スキャニングを行うオブジェクトが非常に大きくなったり、非常に小さくなる場合には、検査や犯罪科学、その他の産業分野で何年も利用されている二台のスキャナ、Artec Ray IIとArtec Space Spiderが使用可能である。
Ray IIであれば、列車のような大規模のオブジェクトや現場そのものも、最長百三十メートルの距離から工学水準の精度でキャプチャすることが可能である。Space Spiderは、小さなオブジェクトのスキャニングに長け、例えば、事故現場の金属同士により生じた極めて小さい切削の痕跡、小さな割れ目やミリ単位以下の亀裂のキャプチャに使用することも可能である。
Artec Studioソフトウェアは、レールのあらゆる大きさを持つ特定の箇所や部品、大破した列車も無事であった列車も含めた事故現場全体、その周辺の様子や付随するすべてのものを含めたオブジェクトのRay IIやSpace Spiderによるスキャンデータを組み合わせて、単独、あるいは複数の高精度の3Dモデルを簡単に作成することができる。
その上で、検査報告の生成の実行や、レールや部品、列車などの上面からの図や断面図のミリ単位以下の精度での作成も可能である。
生産中止となった鉄道部品を社内で
リバースエンジニアリングするための3Dスキャニング
鉄道企業は、Leoやその他のArtec 3D社製のスキャナを製造中止となったパーツや機器のリバースエンジニアリングに利用することで、その投資利益率を更に向上させることも可能である。組立ラインの操業開始から何十年もの間に、製造が終了してしまった部品は何百にも上る。
リバースエンジニアリングの対象として歓迎される一例となる、古い路面電車のカプラー用部品
変速器のような複雑な組立用部品は言うまでもなく、構造上重要となるギアやバルブなどが破損した際に、その代替品が購入できないことがよくあるが、その場合、最も一般的に提案されるのは、コストは嵩むものの、その機器自体の新調である。
しかし、スキャンするもののサイズに応じて、Leoやその他の3Dスキャナのいずれかを利用すれば、以上のようなオブジェクトも数分でキャプチャした上でデジタル化するごとが可能であり、その上で、まず自身でCAD上において、そして、更にCNC圧延、3Dプリンティング、鋳造やその他の方法で、実際に再製作することができる。
結論
3D技術による鉄道レール検査やその他多くの用途において、プロフェッショナル用3DスキャナのArtec 3D社製の一連のLeoやその他のスキャナなら、皆様やご自身の企業の将来のために、検査やリバースエンジニアリングの可能性を拡張し続けていくことも簡単となる。
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