3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec Leo、及びArtec Space Spiderがピエタの神聖な彫刻のデジタル化を支援

課題:キリスト教美術史において中心となる主題の一つを含み、スロバキア共和国の都市、Šaštínへ多くの巡礼者を誘った彫刻である、ピエタの正確なデジタル複製を製作すること。

ソリューション:Artec Leo、Artec Space Spider、及びArtec Studio

結果:その美的詳細すべてに細心の注意を払い、安全な形で見事にキャプチャされて素早く完成した、3Dプリンティングにもすぐに利用できる、ピエタの彫刻の高精度の3Dモデル。

なぜ、Artecなのか:多くの美術品の保存管理者向けの頼りになるデジタル化テクノロジーである、軽量で非侵襲性の上、携帯型のArtec 3D社製ソリューションは、彫刻や遺跡から建造物や礼拝所全体までを含む、あらゆる形態の文化遺産をキャプチャできることで、その名声を得ている。

The Pieta Digitized

ピエタはキリスト教美術史で中心となる主題の一つであり、イエス・キリストの亡骸を抱える聖母マリアを描写している。画像は、3D Master社のご厚意により掲載

二十一世紀において、芸術は未だに多くの人々にとって崇拝に値する存在であるが、以前と変化した点は、そういった芸術に触れる機会が遥かに増えたことである。高解像度でのデジタル化は、名作の保存、及び、さらに幅広い鑑賞者に味わってもらうための公開の双方に役立つテクノロジーである。そのようなテクノロジーが絶えず洗練され、より完全なものとされ、進化されていくにつれて、我々は幸運にも、肉眼で見ることのできるものの中で最も洗練されたディテールを目にすることができるのである。その目的が絵画の復元であっても、古代文明の遺跡の調査や彫刻の3Dプリンティングであっても、極めて正確な3Dスキャニングは必要となるデータを取得するための代表的な手法となっている。

3Dスキャニングの明白な多くの利点の一つは、 完全に非接触な点である。オブジェクトに触れないことによって損傷を与える危険性を排除することができるため、3Dスキャナは貴重な物品を仮想世界へ送り込むには理想的な機器となる。したがって、特にピエタのような価値のある、壊れやすいオブジェクトのデジタル化においては、安全性を確保した上で美術品の外観、真正性やその意図を復元することも全く可能である。

今回の物語は、次のように始まる。Artec社製3Dスキャニングソリューションが、貴重な文化遺産の忠実な復元のために必要とされた。その遺産はすべて金色で光沢があり、適切な機器でなければキャプチャが困難となり得る代物だった。

彫刻に見られる信仰上の意味

ピエタはキリスト教美術史において中心となる主題の一つであり、十字架から下ろされた後のイエス・キリストの亡骸を抱える聖母マリアを描写している。彫刻によく見られるように、この作品は聖母マリア一人により追悼されるイエスを表現しており、これは『キリストの哀悼』に特有の形である。この主題には心に迫るような、感情に訴える意味合いが含まれている。この亡くなった子供を抱きかかえる母親の、胸が締めつけられるような悲しみを描写した光景は、十四世紀初頭より信奉者、美術愛好家の双方の心を捉えてきた。

この主題は、初期の独仏の創作者から一四九九年のミケランジェロまで多くの芸術家を触発してきたが、スロバキアの都市、Šaštínでも彫刻として具現化されている。この像は世界中からの多数の巡礼者の最終目的地点となり、この奇跡を起こすと考えられている彫刻に祈り、参拝するために、巡礼者はこの場所に訪れていた。一七三三年にはパウロ派の神父たち(Pauline Fathers)がピエタの周辺に巡礼者の教会と修道院を設立したが、このことはその後の何世紀もの間、特に二十世紀の共産政権の期間に信奉者にとっての彫刻の宗教的意味が強調されることに繋がった。当時、国家を荒廃させていた迫害の渦中で、Šaštínはスロバニア人にとって神、そして平和両方への信義を守るための避難所として機能していた。

The Pieta Digitized

彫刻によく見られるように、この主題には信奉者、芸術鑑定家の双方を魅了する、感情に訴える意味合いが含まれている。画像は、3D Master社のご厚意により掲載

今日では、ピエタは国家的に共有される記憶の中の特別な位置を占めており、ミサにおいて現在の法皇であるフランシス法皇により讃えられた際には、五万人の信奉者の出席が見込まれていたこの儀式のために、地域はこの素晴らしい彫刻を3D印刷することに決定した。この神聖な彫刻に瓜二つのレプリカを製作するためには、Monkeyfab社とArtec 3D社アンバサダーの3D Master社の二社のテクノロジー企業が選ばれた。

かけがえのないオブジェクトの損傷を与えない形でのキャプチャに、二つのスキャナの一番良い点を結集

3D Master社は、この課題を極めて真剣に受け止めた。自身の何年もの3Dスキャニング経験をもってしても、ピエタはその複雑なジオメトリ、光沢のある金色のサーフェス、そして冠などの入り組んだディテールにより、スキャニングに対して難題を突き付けた。そのため、安全性を損なうことなく、極めて正確なデータキャプチャを行うために最適なソリューションを選ぶことが不可欠となった。このプロジェクトでの以上のような必要性が、Artec社製スキャナであるArtec LeoSpace Spiderの併用に繋がった。

彫刻の重要性と値打ちから考慮すると、今回の作業は保存管理者の観点から、その美的要素をすべてレンダリングするだけでなく、工程の監理にも細心の注意を払って行う必要があった。誘致された専門業者は、テクノロジー機器が貴重な記念像及び美術品の扱いにおけるすべての要求と基準を満たすように管理を行った。

The Pieta Digitized

Artec Leo、及びArtec Space Spiderによる3DデータはArtec Studio上で組み合わされ、完璧な3Dモデルの精製に利用された。画像は、3D Master社のご厚意により掲載

すべての安全対策が整った上で、ピエタはまず、その全体のデジタル複製を〇.二ミリメートルの解像度で取得するため、Artec Leoによりスキャンされた。ワイヤレスでAI駆動式のLeoなら、その革命的なアルゴリズムにより、邪魔になるものも無い中でオブジェクトの周りを動きながら、動画を撮るように高品質の3Dデータをキャプチャすることができる。スキャナは金色の光沢のあるサーフェスを容易にキャプチャし、冠の複雑なジオメトリのレンダリングを行う作業がその後には待っていたが、この工程こそがArtec Space Spiderが主役になるときであった。この3Dスキャナは安全なブルーライトテクノロジーを基に、強化された精度でより微細なディテールをキャプチャするために利用されることが特に多い。その後、双方のスキャナによるデータが組み合わせられた上で、現物に全く忠実な3Dモデルが完成した。

「3Dスキャニングのお陰で、新しい彫像のモデルは十分の一ミリメートルの精度で現物を反映したものとなり、最も細かなディテールの復元を可能とする適切な設定値により作成された3D印刷物である」と、3Dプリンティング企業のMonkeyfab社を所有するPiotr Twardoは語る。

一つのプロジェクトにおける二つのスキャナの使用は、Artec Studio上でデータを組み合わせ、処理することが非常に容易なため、実際にはいとも簡単に行われた。作業チームは迅速に彫刻全体、及び冠の石などの比較的小さい要素のジオメトリを同時に取得することができた。残った作業は、Artec Studioのアルゴリズムにより3Dモデルを作成し、精製することだけであった。完成したモデルは、3DプリンターやCNC機器ですぐに使用できる品質であった。

The Pieta Digitized

冠の入り組んだジオメトリは、今ではその細かいディテールの一つ一つも味わって鑑賞することができる。画像は、3D Master社のご厚意により掲載

芸術品の保存管理者にも言いたいことがある

今回のピエタのように3D印刷された文化遺産は、その保存や利用可能性の向上のためのみに対し重要なのではない。より広義には、物語の収集や芸術作品との知的、そして情緒的繋がりの形成にも役立つ。芸術品の保存管理専門家も、起こり得るリスクを抑えた上で、名作の総合的な体験を鑑賞者に提供することが特に重要である、と感じている。

The Pieta Digitized

正確なデータキャプチャの結果、完成したレプリカは驚くほど元の彫刻に忠実なものとなっている。画像は、3D Master社のご厚意により掲載

「我々は最新のテクノロジーを常に把握しておくことに努めているが、3Dテクノロジーは収集物のデジタル化や複製の製作に便利なツールである。保存管理者として、私は記念建造物の安全を第一に配慮している。これまで、彫刻やその他の大規模のオブジェクトのレプリカの製作では、オブジェクトにより密接に接触しなければならない必要性を伴っていた」 と、保存管理者のPiotr Frączekは説明する。

「まず、正確な計測を行うか、あるいは、鋳造のために鋳型を作るなどの必要があった。そのためには、常にオブジェクトを使用するか、そのサーフェスに直接触れなければならず、避けるべきリスクが生じる。スキャニングは工程も短い上に非接触で行われるため、このリスクは低減される。デジタルファイルを取得して後の処理に使用し、様々な技術と素材を用いることによって、あらゆる寸法の複製を作成することもできる」

共有された文化遺産への更なる理解を育む

二つの彫刻の間の類似性は驚くほどであり、3D印刷され完成したピエタが儀式において注目の的であったことも当然のことと言える。「この神聖な、そして同時に歴史的な遺産はその「代役」を手に入れたため、屋外での祭事などでは自らは安全な場所に保管されたままで、自身の代わりとして利用することもできる」と、Frączekは締めくくる。

The Pieta Digitized

儀式での注目の的である、3D印刷されたピエタ。画像は、3D Master社のご厚意により掲載

更なる良い知らせとして、Artec 3D社のテクノロジーの支援により作成された今回のデジタル複製は、元の美術品の現在の状態を完璧に復元しており、何時でも必要なときに研究、比較、修復を行うことができる。3Dモデルがここまで多用途であれば、レプリカの作成以上に、更に多くのことを実現することができる。すなわち、プロフェッショナルや施設、その他の多くの有形文化遺産の管理人は、教育や触発のために数え切れない多種多様な方法を採用できるのである。

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