3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec 3Dが特殊船舶デッキの伝統的製法に革新的3Dテクノロジーをもたらす

課題:イタリア人の船大工に、手製のヨットへ設置する特注のチーク材製デッキを製作するために、デッキをスキャンしてCAD ドローイングへ変換する手段を講じる必要が生じた。

ソリューション:Artec Eva、およびArtec Studio

結果:六〇平方メートルまでの大きさの船の甲板であれば完璧な精度でのスキャンが可能であり、作業も従来より最大五倍の速さで完了し、資材の無駄も生じない。

依頼のあった船舶の製作を決定するかどうかの判断には様々な要素が関わってくるが、詰まるところ、その船の独創性が決め手となる場合が多い。イタリアの船舶製作の伝統は何世紀もこの考え方に沿っていて、地域の船舶製作技術の保護に貢献してきた。

しかしながら、長年の歳月の経過と市場での需要の大きな変化により、熟練した船大工たちは大量生産業者との競合がより難しくなってきたと感じている。品質では劣らないとしても、どうしても製作時間が問題となるのである。そこで、最も熟練した船大工は、伝統的なヨットの製作を消えゆく芸術とさせないためには、大工たちが昔ながらの芸術的手腕で船の隅々まで注意を払った作業ができるよう、現在可能な限りの速さと正確さでサポートできるテクノロジーを受け入れることも一つの手だ、ということに気が付いた。

そのような船大工の一人が、オーランド・スタビレ(Orlando Stabile)である。
そして、そのようなテクノロジーが、Artec 3Dスキャニングソリューションなのである。

Custom yacht decking

イタリアの美徳を象徴するヨットの一つ、パイケア(Paikea、写真はオーランド・スタビレ提供)

オーランド・スタビレはStocks and Precisionの経営者で、主に船やヨットの甲板の修繕と設置に携わっており、彼の製作品はイタリアの美徳の象徴として評価されている。腕のある大工であるばかりでなく、元来好奇心の強いスタビレはビジネスの遺伝子を持って生まれてきたことは確かなようで、市場での競争に勝つための意欲的な計画を立てた。その計画の最も重要な目的とは、船舶の甲板を測量するために通常必要な時間を大幅に削減することである。簡単に言うと、甲板をスキャンして平面形のデジタル版を生成し、そのモデルの周長を慎重に測った上でCADドローイングへ変換することで、船舶に多く見られる曲形部分や複雑な表面にうまく適合させた上で周長内にチーク材の薄板を設置しようとしていたのである。

Custom yacht decking

冒険心にあふれた船大工オーランド・スタビレの作業風景(写真はオーランド・スタビレ提供)

チーク材はスタビレが業務で扱う類の木材であるが、高価な建材でその価格は一平方メートル当たり三百ユーロに上ることもある。特徴的な光沢を持つ華やかな美しさに加え、この木材は非常に丈夫で、耐水性、耐腐食性に長けるため縮んだり腐ったりせず、独特なイタリアンスタイルにこれほど理想的な建材は他にない。不正確な測量もしくは部分的なやり直しによって、この木材を無駄にしたり破棄したりすることは絶対にできない、ということはこのすべての特徴から明白だろう。

総力を上げた、作業にふさわしいツールの「捜索」

自身の計画を実現するためのソリューションや助言を求める傍ら、スタビレはArtec 3D社のアンバサダーで3Dスキャニングについて鋭い洞察力を持つ、ShareMindのピエトロ・メローニ(Pietro Meloni)に頼ることにした。依頼に興味を示し、メローニはスタビレが当時のプロジェクトへの採用を考えていた、軽量で多用途に利用可能な3DスキャナであるArtec Evaを使用する際の技術的、事業的側面の双方について説明した。

迅速に正確なテクスチャスキャンの可能な類稀なる性能のお陰で、Evaはここ数年の間、3Dスキャニング市場で先頭に立っている。革新的な構造化光技術を基盤としたこのハンドヘルド3Dスキャナを使用すれば、瞬時に高精度なオブジェクトの測量が可能となる。最大0.2ミリの3D解像度を持つArtec Evaは、鮮明で細かいスキャンを必要とする大規模なプロジェクトにはぴったりの機器だった。

ただ、スタビレはまだ購入を躊躇していた。それは、予算が限られていた上、機器導入の成功例となるような同様のプロジェクトがまだ見当たらないせいだったが、それでも、この船大工の巨匠は常に前向きだった。Artecのテクノロジーを紹介されてすぐ、スタビレはEvaを自身で購入し、求めている成果を上げるためにメローニに力添えを頼んだ。ShareMindの熟練技術者であるメローニは惜しげもなく、できる限りの指導に当たり、スタビレは作業を開始した。

Orlando Stabile custom yacht decking

Artec Evaでの正確なデータの取得(写真はオーランド・スタビレ提供)

メローニは、当時の床のサーフェスはジオメトリが幾分変化に乏しいものの、その正確なスキャンは簡単にできると確信していた。その上で提案したのは、四〜五平方メートルの領域をスキャンした上で、Artec Studioのソフトウェアを使ってグローバルレジストレーション、メッシュ化とテクスチャ処理を行うことであった。メッシュ化されたデータは関連したスキャンデータと一緒に、パズルのように並べることでモデル全体を完成することができる。この助言に従い、スタビレは自身の所有するEvaとラップトップのみという最小限の機材を使って、広大な領域のスキャンとそのデータ処理を完了させた。

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スキャンデータの処理とCADドローイングへの変換(写真はオーランド・スタビレ提供)

メローニはこう説明する。「スキャンするサーフェスの量が増えれば、ジオメトリの許容範囲に収まる値を得たり、膨大な量のデータを処理したりするためのちょっとしたコツや手がかりが必要となってくる。スタビレ氏はこれまでに、前述の技術を使って最大五十メートルにも及ぶ巨大な船のデッキをスキャンすることができた」

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ボートの段階ごとのデジタル化(写真はオーランド・スタビレ提供)

最も重要な参照ポイントを数箇所入力するだけで、スタビレはスキャニングを導入した初めてのヨットであるパイケアのデッキ全体を、ミリ単位の正確さでデジタル化することができた。残された唯一の課題はイタリアの輝くように明るい太陽の下でのスキャンであったが、カーテンを使うことでスキャンする領域にちょうど良い光量を調節できるようになった。

少ない作業量でより多く測量を、しかも瞬時に

従来の極めて単純な作業方法を鑑みて、スタビレは驚かずにはいられなかった。正確な寸法を得るためには、以前は木製の型板を使用せざるを得なかった。測量されたチーク材の薄板は作業場での前処理は可能であったが、その完成と取り付けは甲板上で直接行っていた。今では、Evaを使用すればスタビレの得たスキャンデータは即時にCADプロファイルに変換することができ、その細長い板は作業場内でコンピュータ数値制御技術(CNC)により加工された合板上に固定できる。

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完璧にキャプチャされたパイケアデッキの一部(写真はオーランド・スタビレ提供)

ボートの他の部材も今やプレハブ式の製作が可能であり、デッキ上ですべて行っていた組み立て作業にかかる時間、およびその作業の複雑さは両方とも軽減される。スタビレによれば、製作完了までの時間は現在、七割から八割も短縮されていて、今では一艘の製作に従来必要だった時間内で四艘から五艘の製作を終えることができる。

スタビレはこう語る。「作業時間の短縮で収入は増加し、より多くの注文を受けることができるようになったが、それだけではない。時間の節約は価格の面でも以前よりも他社と競うことができるようになった上、品質の改善により、要求のより厳しい顧客の方ともお仕事ができるようになった」

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船大工スタビレとその"傑作"(写真はオーランド・スタビレ提供)

海のように無限の可能性を生み出す新しいテクノロジー

どんなビジネスであれ、投資に対する利益がすべてと言える。利益の計上が早ければ早いほど、更なる進歩や成長、より多くの新たな顧客の獲得や増収を期待できる。Artec Evaの試験的採用の成功に触発され、スタビレはスキャナをもう一台購入することを考え始め、当初はArtec Evaを再び購入するつもりだったものの、最終的にはワイヤレスのArtec Leoに投資して、自身の3Dスキャニングの可能性を拡げたい考えに至った。スタビレの抱く野望の中には、サレルノ港にある、伝統製法を象徴するボートであるアストラのメンテナンス業を引き受けたい、という思いがあった。

「一九二八年に進水し、当時ミシン業界の頂点にあったシンガー氏が最初に購入した」とスタビレは指摘する。「この素晴らしいボートは未だに、ヨットのデザインに見出せる、心に響くような優美さを体現している」

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間もなく修復予定の伝統製法の象徴的ヨット、アストラ(写真はオーランド・スタビレ提供)

この次に扱うヨットのプロジェクトが新規の製作であれ修復であれ、完成した船舶は熟練と情熱によって設計された芸術品であることには違いないが、今では更に、3Dスキャニングのテクノロジーのみが可能とする速さと正確さでの製作が可能となったのである。

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