3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Kurio 3D、Artec 3D製品を用いたスキャンでプレミアリーグのスター選手用に着圧スパッツを制作

課題:疲労回復と血流関連の病状を治療するのに役立つ、アスリートや患者の脚によりフィットする着圧スパッツを開発すること。

ソリューション:Artec Eva、 Artec Leo、 Artec Studio、 MATLAB

結果:3Dスキャンを仕立てされたスパッツの測定値に直接変換するアルゴリズム。Artec 3Dは、独自のソフトウェアとArtec Leoを使用し、従来の巻尺では到底達成できない精度レベルで、世界有数のサッカー選手向けにカスタムウェアを作成しています。

Artec 3Dを選ぶ理由Kurio 3DはArtec Evaから完全にワイヤレスのArtec Leoへ移行したことにより、1時間未満でチームのプレイヤー向けにカスタム仕様のレッグウェアを簡単に作成できるようになりました。

Kurio 3D

Artec Leoで被験者をスキャンするノッティンガム・トレント大学のジャック・ アシュビー(Jack Ashby)博士

手足のむくみに悩んだ経験がある方や、下半身に血流の問題がある方、もしくは薬局にある商品をいろいろチェックすることがある方なら、おそらく着圧スパッツの存在は既にご存じのことでしょう。

足や足首に優しく圧力をかけるように設計されたこれらのぴったりフィットして伸縮性のある衣類は、腫れや疲労、静脈障害の進行を防止します。しかし、そういった着圧スパッツはすでに世界中のお店で購入できますから、そこで買えば済む話では?とお思いかもしれません。

しかしスポーツウェアの開発会社であるKurio 3Dは、そんな意見に異を唱えます。彼らは英国のプレミアリーグやチャンピオンシップのサッカー選手、そして女子代表チームの選手など、今まで4,000人以上のアスリート向けに着圧スパッツのカスタマイズに携わってきた会社です。

Kurio 3D

Artec Studioで3Dスキャンデータを処理するアシュビー博士

Kurio 3Dによると、そういった既製の製品は現在、身長と体重に基づいてのみサイズ展開がされているそうです。「様々な細かい部分の構造には人によって大きな違いがある」ことを考慮して、Kurio 3Dは「これでは人の足のサイズを測ることはできない」と言います。3Dスキャンが採用されるまでは、このことは仕立てされた運動用スパッツの市場で未解決のままでした。

「サッカー選手の中には背が高くてがっしりした体型の人もいます。しかし、同じ身長でも、走りやすい体格の選手もいます。ですから彼らの脚の寸法は完全に異なるのです」とKurio 3Dチームは言います。「そしてまた、鍛えられた筋肉でガタイの良いサッカー選手もいます。一般の人は彼らのようなふくらはぎはまず持っていないでしょう。彼らはふくらはぎが非常に大きいので、大腿四頭筋やハムストリングスも大きい傾向があります」

「現在、アスリート向けに仕立てされた着圧スパッツをお店の棚で見つけて購入することは不可能です。そんなものは存在しないからです」

仕立てをレベルアップさせる

Kurio 3Dのディレクターは生まれつき右ふくらはぎが左ふくらはぎより小さいため、個人的にサイズの合わない着圧スパッツを体験したことがありました。彼の場合、片方のスパッツはある程度の着圧効果をもたらしますが、もう片方のスパッツはまったく着圧効果がなかったそうです。仕立て屋の父親からテープを使用して採寸する方法を学んだ彼は、スパッツをカスタマイズする独自の方法を開発することにしたそうです。

しかし、彼の初期の取り組みは骨が折れるような作業となり、34 か所の脚の寸法を手作業で測定しなければなりませんでした。このプロセスを自動化させる手段を求めて、彼はその後Artecアンバサダーの Central Scanningでマーケティングマネージャーを務めるアレックス・チュング(Alex Chung)氏に相談することにしました。チュング氏は、Kurio 3Dの仕立てのニーズを満たしてくれて、使いやすく、精度レベルもきちんと備えた最適なスキャナを選ぶ支援をしました。そのスキャナとは、Artec Evaでした。

当初、Evaは同社の測定ワークフローの合理化とデジタル化に貢献していました。軽量でコンパクト、そして使いやすく実績もあるこの3Dスキャン用ソリューションは、人体のような中型サイズのオブジェクトを迅速に測定することができ、医療用途で広範囲にわたる成果が得られています。

しかし、スパッツのフィット感を最適化するには、さらに柔軟性が必要であることがすぐに明らかになりました。これらの目標を追求するために、Kurio 3Dチームは、初歩的なリアルタイムでのトラッキング機能を獲得するために、Evaのケーブルを延長させ、サードパーティの3.5インチのディスプレイを追加してみました。

しかしその後すぐに、Artec 3Dは完全にケーブルが不要のスキャナを発売したことで、Kurio 3Dが行っていたスキャンの状況を一変させたのでした。そのワイヤレスのスキャナとは、Artec Leoでした。AIを搭載したこの高速デバイスのLeoにアップグレードして以来、Kurio 3Dチームは今まで苦戦してきた過去とは一転し、出張先の現場でオンデマンドでの3Dスキャンを展開したり、アスリートの四肢をあらゆる角度からキャプチャできるようになりました。

Kurio 3D

アシュビー博士はArtec Leoに内蔵されたディスプレイを使用して、リアルタイムで完全な人体のキャプチャを保証します

「スキャン中にノートPCを持って歩きまわりたくなかったので、Evaスキャナの配線を長くしたり、サードパーティーのディスプレイを追加することでLeoの代替品を自分で作ろうとしていたわけなんですが」と、Kurio 3Dのディレクターは言います。「その後、Artec 3DがワイヤレスでしかもスクリーンつきのLeoをリリースしてくれたおかげで、私の仕事が非常に楽になりました。以前は常に私が膝をついてかがんだ状態で、手動で顧客の両脚を測定するのに大体15分から20分かかっていました。しかし今ではちょうど 1分半だけになりました。たったそれだけです」

「私達はアレックス氏と連絡を取ったことで、そんなことが本当に実現したんです。当時の私達にとって、必要な精度を提供してくれるスキャナを見つけることがまさに一番重要なことでした」

Kurio 3Dの「特製ソース」

こうして、Kurio 3Dは測定のワークフローを近代化することになりました。しかし、同社のビジネスの成功は最先端のハードウェアだけによるものではありません。Leoを使用することで、アスリートの四肢を最大0.1mmの精度でキャプチャできることがわかりましたが、同社はそのデータを直接適用できる測定値に変換させる方法を見つけなければなりませんでした。

ここで、Kurio 3Dと深く親交のあるノッティンガム・トレント大学講師のマーティン・ルイス(Martin Lewis)博士が登場しました。数学の達人であり、またプログラマーや生体力学者としての顔も持つ彼は、スキャン結果を測定値を含んだ.csv形式のファイル (スプレッドシート) でエクスポートできる、プログラミングプラットフォームのMATLABが使用するアルゴリズムの開発を率先した人物だったと言われています。

チュング氏が Kurio 3D の「特製ソース」と表現するこのアルゴリズムは、スキャン断面を「カット&マップ コード」として読み取れるものに変換することによって機能します。便利なことに、このプロセスの最初のステップはArtec Studioで実行できます。 その際、断面の穴埋めツールや外れ値除去ツールに加え、幅広いエクスポート形式の互換性を活用します。

これらのメッシュが、グローバル位置合わせの後にエクスポートされてから同社のアルゴリズムによる処理を受けると、それらはカスタマイズされた製品となり、製造の準備が整います。

Kurio 3Dによれば、このプロセスは以前よりも「パターンの精度と品質が大幅に向上」しており、スキャンから完成品を得るまでにかかる時間はわずか30分だそうです。

「これはパターンを描くよりもずっと速いです。当社独自のソフトウェアは、実際に円周を1ミリメートルごとに識別します。次に、10分の1ミリメートルごとに計測します。次に、それを平らなパターンに重ね合わせます」と、Kurio 3Dのディレクターは付け加えます。「言い換えれば、脚のパターンを作成するということです。私達の観点からすると、それは極めて大きなことです」

「私達は25人のチームを1時間未満でスキャンすることもできます。そんな人数のチームを手動で測定することは不可能と言えるでしょう!」

Kurio 3D

Artec Leoでキャプチャされた後、Artec Studioで処理された脚全体のスキャン

同社はトップレベルのサッカー選手向け用品の開発だけでなく、クリケットやバスケットボールなどの多くの他のスポーツ選手とも協力してきました。彼らは確立されたブランドの既製品よりも優れたクオリティの着圧スパッツを作成できることが証明されましたが、それだけで話は終わりませんでした。

Kurio 3Dチームは、これからも全身のスキャンを最適化する方法を検討していく中で新たな可能性を見出しながら、「前進するための手段」として「3Dスキャンに取り組み続けていく」と言います。

医療用3Dスキャンへの展開

彼らの製品が宣伝どおりに有益であることを確認するために、Kurio 3Dはノッティンガム トレント大学の運動生理学講師であるジャック・アシュビー(Jack Ashby)博士などの学者と協力してきました。スパッツの初期性能検証テストを実施して以来、アシュビー氏は、臨床とスポーツの分野でのArtec 3D製品を用いたスキャンの可能性をさらに探求しながら、Kurio 3Dとの協力を続けてきました。

具体的には、ノッティンガム・トレント大学が所有するLeoを使用して、リンパ浮腫などの病気を治療する方法の検討を開始しました。この病気の主な症状の1つは身体の腫れであるため、3Dスキャンでこの症状が発生する速度を追跡することで、病院側にコストや安全性、スピード面でのメリットをもたらしながら、この病気の管理に役立つ可能性があると考えられています。

「既存の画像技術は非常に高価なものです。数週間ごとにMRIを実行するとなると、コストが問題になります」とアシュビー氏は説明します。「水の変位を利用した測定は、脚の体積を測定するためにも一般的に使用されます。それは非常に簡単で費用対効果も高くなりますが、所要時間は約 20分ほどかかります」

「なんの支えも使わずに誰かの足を静止させておこうとするのは困難であり、測定誤差が増大する要因にもなります。3Dスキャンならば、非侵襲的で効率的なソリューションを提供します」

アシュビー氏の研究により、3Dスキャンは水の変位を利用した測定よりも信頼性が高いことが明らかになりました。彼は、上肢と下肢の3Dスキャン測定を水変位によって得られた測定と比較してみたところ、3Dスキャンの方が検査と再検査の信頼性が高いことを発見しました。

その結果、3Dスキャンの測定値は脚の実際の体積から (偏差または誤差により) 3~5%ズレている可能性があり、これは水変位の測定で見られる4~7%よりも一貫して低いものでした。アシュビー氏は、「この違いはそれほど大差がないように思われるかもしれませんが、これは脚の体積が5%変化した場合、3Dスキャナならこの微妙な変化を一貫して確実に検出できる」ことを意味すると述べています。

その結果、アシュビー氏は「この分野ではさらなる研究が必要である」と考えており、それは彼自身も今後継続していくつもりだそうです。一方で、医療機関もまた、四肢体積評価のために3Dスキャンのような信頼性の高いテクノロジーを検討する必要があると彼は言います。

「2017年にノッティンガム・トレント大学との研究プロジェクトとして、Kurio 3Dのプロジェクトの初期段階から、完全な商品化に至るまで支援することができて、私はとても光栄です。また、現在Kurio 3DがArtec Leoを使用して一部の著名なクライアントとの成功を収めることができている現状に対し、大きな喜びを感じています 」とチュング氏は言います。「ノッティンガム・トレント大学のジャック・アシュビー氏は他の先駆的な研究分野でもこのテクノロジーを利用しようとしていますから、私達はこれからも彼のイノベーションを追及していくパートナーであり続けたいと考えています」

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