Artec Leoを用いた3Dスキャンでトレーニングされた画期的AI、橋の耐荷重を予測
課題:アメリカ全土の地方自治体にかかる負担を軽減させ、予算内で数千規模の橋を維持管理する責任を果たし、安全上の懸念から橋を閉鎖するというような、人々にとって大きな負担となる結末をできるだけ避けること。
ソリューション:Artec Leo、Artec Studio、ABAQUS、自社開発のAIアルゴリズム
結果:橋の梁(ビーム)部分のデータセットが腐食レベルを非常に高い精度で示していたおかげで、耐荷重を計算したり、故障を回避するために必要な修理を警告できる新型AIにそれをデータとして入力することができました。
Artec 3Dを選ぶべき理由: 内蔵ディスプレイと完全なワイヤレス機能を備えたArtec Leoは、比類のない柔軟性・速度・精度でインフラストラクチャをキャプチャし、迅速かつ信頼性の高い分析を実現します。
橋の下の梁をデジタル化するために使用されているArtec Leoの3Dスキャナ
日常生活において、ある物体の耐久性を強調する意味合いで「鋼鉄並みに頑丈である」などと表現することがあります。現に、鋼鉄は地球上で最も強力な素材の一つです。しかし、鋼鉄にも限界はあります。
たとえば、多くの公共橋は、極端な気象条件によって劣化しやすい鉄骨の梁によって支えられています。これまでに世界中で橋の故障が多くの怪我や死亡、そして多額の経済的損失を引き起こしてきたため、定期的な点検を行うことは、橋がフル稼働しても安全であることを保証するために不可欠です。
橋の梁に劣化が判明した場合、その荷重制限が引き下げられる可能性があり、場合によっては橋が閉鎖されることさえありますが、これには多額の経済的コストを伴います。
これは容易に想像できることでしょうが、当局は町や都市にある何千もの橋のインフラを管理し、他の公共サービスの提供にも責任を負っています。このバランスを取るには、リソースを最大限に活用するために効率性が不可欠になります。
そういった背景から、ドレスデン工科大学とマサチューセッツ大学アマースト校の研究者たちは、より高速で正確な鋼橋の点検方法の開発を開始しました。
劣化の兆候が見られる鋼橋の梁(キャプチャされた3Dスキャンデータにそれが反映されている様子)
現在、このようなインフラを詳細に調査するには、腐食した材料を取り除き、残った部分を測定するという、時間と労力を要する超音波のシングルポイントキャプチャを使用しています。その一方で、Artec Leoを使用することで、研究者たちは梁を測定し、より迅速で深い分析に必要な高精度のデータを取得するためのはるかに効率的な方法を特定しました。
Leoの効率性は「比類のないレベル」
もともとは、研究者たちは地上レーザースキャナでキャプチャされたデータを中心にワークフローを開発していました。マサチューセッツ大学アマースト校には、三脚に取り付けられたデバイスなどの先進技術が揃ったデジタルメディアラボ3Dイノベーションセンターがあります。このデバイスは、以前に河岸のようなオープンな風景をデジタル化し、研究するために使用されていました。
廃止された主桁(橋の荷重を支える部材)の腐食パターンを特定する場合に、このLiDARスキャナは十分な詳細をキャプチャできることも判明しました。しかし、実際の橋の点検では、梁は両端で測定する必要があり、バケットクレーンでのアクセスが必要となる箇所があります。
より柔軟性を求めて、チームはArtec Leoに切り替えることにしました。このデバイスは、0.1mmの精度と最大35百万ポイント/秒のキャプチャ速度を持つワイヤレス型の万能デバイスです。Artec 3DのアンバサダーであるSource Graphicsから供給されたLeoは、単に高速でコンパクトなだけでなく、非常に直感的で、高精度を求める場合に比較的初心者でも簡単に使い方を学ぶことができます。
Artec Leoの3Dスキャンデータを使用して、自然に腐食した橋の梁に対して梁の偏差と残りの厚さの分析が行われました。
「通常、腐食は梁、つまり橋のデッキの支持構造に発生します。橋にはデッキがありますから、一方の側をスキャンし、停止し、バケットを移動させてから、もう一方をスキャンする必要があるのです」とマサチューセッツ大学アマースト校の准教授シモス・ゲラシミディス氏は述べています。「そのため、ハンドヘルド型で、多用途で、持ち運びが簡単であることが非常に重要です。Leoは被写体から近すぎるか遠すぎるかを教えてくれるので、スキャンがうまくいったかどうかをその場で知ることができます」
「Leoを使用すれば、5分間で (少なくとも) 数十万ポイントを取得できます。従来の方法ならば、3分間で1つのポイントしかキャプチャできませんでした。したがって、キャプチャされたデータあたりの時間をもとに効率を測定する場合、Leoはまったく異なるレベルの効率を提供することになります」
AIによる予測検査
Leoを用いた3Dスキャンの方法を習得したゲラシミディス氏と彼の同僚は、彼らのワークフローの改良に取り組みました。スキャン処理は、 Artec 3Dのスキャンキャプチャおよび処理用ソフトウェアのArtec Studioで開始されました。このソフトウェアはHDモードを搭載しており、光沢のある金属の表面をデジタル化する場合でも非常に鮮明なスキャンを実現します。さらに、Artec Studioは業界最高水準のテクスチャとジオメトリのトラッキングを可能にする独自のアルゴリズムも備えています。
このプログラムに組み込まれた検査ツールを使用して梁の分析を行うこともできますが、彼らのチームは位置ずれの可能性を回避するために、加工されていない点群を代わりに使用して作業を行うことを選択しました。
データの整理中に、彼らは各桁の鋼板の残りの厚さを示す2Dの等高線マップを生成しました。これらのマップは、検査員に梁の状態を視覚化するための迅速かつ簡単な方法を提供します。しかし研究者たちはそこで終わらせませんでした。彼らはこのデータを活用して橋の耐荷重を明らかにする方法の開発を目指していたのです。
そこで、データを座標系に配置した後、チームはそれを ABAQUS有限要素解析(FEA)ソフトウェアに入力して構造解析を行いました。彼らは廃止された3本の梁を複数回スキャンしてそのプロセスを繰り返した後、FEAの結果を組み合わせて、過負荷によって破損する恐れのあるいくつかのシナリオを計算で生成しました。
「作成された1,400パターンの腐食シナリオのそれぞれについて、社内で開発されたアルゴリズムのフレームワークを使用して有限要素モデルを生成しました」とドレスデン工科大学の研究者のジョージ・ツォルツィニス(George Tzortzinis)氏は説明します。 「そこから、腐食した梁の耐荷重と正確な破損状態を特定することができました。」
小さな穴や細かい表面の詳細を含む桁の完全な3Dスキャン
チームは橋の分析をさらに加速することを目指してこれらのシナリオを使用し、機械学習を用いて入力データ間のパターンを見つけ、耐荷重を計算できるAIをトレーニングしました。というのも、荷重評価を行うエンジニアが3Dスキャンでキャプチャした等高線マップをこのAIツールに入力すれば、梁が所定の荷重を支える能力を自動的に評価できるという考えが彼らにはあったからです。
チームは制御された環境でこのアプローチを実証した後、マサチューセッツ州で稼働中の橋の点検で実際にそれを適用しました。振動があったり、アクセスに制限があったにもかかわらず、彼らは梁全体の同様の領域における摩耗領域を迅速かつ効率的に特定し、エンジニアが橋の荷重評価を非常に高い精度で割り当てるために必要なデータを生成することができました。
AI を活用した点検の将来性
従来行われていた橋の点検方法と同様に、研究者らの方法はクレーンをレンタルしたり、部分的な道路封鎖を必要としますが、それでも従来の方法と比べてより迅速で、点検の不確実性を大幅に低減させるものになるでしょう。米国では2万本以上の鉄橋が「劣悪」な状態であると評価されている中、10万本以上が「普通」と評価されているため、彼らのより効率的なアプローチが連邦高速道路局や州の交通当局が推定1250億ドルの修理遅延に対処するのに対処できるのではと考えられています。
今後、チームは調査結果を包括的なデータ収集トレーニングコースに組み込んで、業界全体に統一性をもたらすことを提案しています。長期的には、AIを活用した荷重評価と断面の損失比較ツールを橋の管理システムに統合することで、米国全土の公共インフラの維持管理も強化できると考えています。
「米国のいくつかの州では、橋の点検のワークフローに3Dスキャンを統合することを検討しており、すでにArtec Leoを導入している州もあります」とゲラシミディス氏は結論付けました。「この業界は変化が遅く、人々は証拠を見る必要がありますが、現在私たちにはまさにその術があります。このテクノロジーはきっと今後もこの業界で成長し続けると思います。今から6ヶ月では大きな変化が起こることはないかもしれませんが、5年から10年のスケールで見れば、状況は変化するでしょう」
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